各国の政府や企業は、半導体需要の変化やサプライチェーンの不均衡、地政学的課題に包括的に対応し、半導体の供給を保護するための政策や行動計画を立てる必要に迫られています。もちろん日本政府も例外ではなく、2023年3月、中国向けの先端半導体製造に必要な装置を厳しく制限する米国に足並みをそろえる形で、先端半導体関連の23品目を輸出管理規制の対象にすると発表しました。
半導体市場の動向
2022年、世界の半導体業界の総売上高は6,180億米ドルに達し、わずか2年間で30パーセントを超える成長となりました。しかし、世界経済の悪化やそれに伴う消費者需要の低迷により、半導体市場の成長は2023年には減速すると見られており、新たな課題を克服する必要に迫られています。市場が勢いを失った理由としては、中国のゼロコロナ政策による経済活動の停滞やロシアのウクライナ侵攻、急激な物価高騰などを背景に、コロナ禍でのロックダウンやリモートワークの導入で一時大幅に伸びた電子機器の需要が低下したことが挙げられます。これまで世界経済を牽引してきた半導体産業の減速がいつまで続くのかは、今のところ不透明です。
半導体市場にとってのチャンス
スマートフォン業界は、半導体産業にとって重要な市場です。技術革新によってスマートフォンが高度化し、没入型技術や5G、人工知能(AI)などの最新技術に対応するにつれて、半導体の価値が高まりつつあるためです。その証拠に2022年、スマートフォン向け半導体の売上高は、業界全体の売上高の約23パーセントを占めました。ほかのPC端末向け半導体の売上高が全体に占める割合は、19パーセントとなっています。また、ハードウェアアクセラレーションやChatGPT(チャットGPT)といった生成AIアプリケーションのトレーニングや運用にも、GPU(画像処理半導体)が展開されるようになっています。
ほかにも、サーバーやデータセンターでは、クラウド データ センターやエッジコンピューティングといったネットワーク技術の開発に半導体が必要であることから、業界にとって新たなビジネスチャンスとなることに期待が寄せられます。さらに、産業用および車載用アプリケーションも需要が増えると予想され、デジタル化によって産業施設やクルマの情報処理機能や通信環境が向上すれば、より高度な半導体技術に対する需要も高まるでしょう。
主要な半導体メーカー
半導体業界の大手企業には、Samsung (サムスン電子)、Intel(インテル)、SK Hynix(SKハイニックス)、Micron Technology(マイクロンテクノロジー)といった統合デバイスメーカー(Integrated Device Maker、IDM)が挙げられます。韓国のSamsungは、半導体の世界市場シェアが最大の企業で、2022年には650億米ドル以上の売上を計上しました。しかし、業績は好調かと思われたSamsungですが、2023年1月末、2022年第4四半期の営業利益が前年同期比で69%減少し、4兆3千億ウォンであったと発表しています。景気悪化による電子製品の需要低下と、それに伴う半導体価格の下落が原因であるとみられています。
世界の半導体産業における注目すべき企業には、ほかにもQualcommやNvidiaといったファブレス企業が存在します。ファブレス企業は自社で生産施設を持たずに、世界最大のファウンドリーであるTSMC(台湾積体電路製造)のような企業と密接に連携し、他社の生産施設で半導体チップを製造します。半導体のサプライチェーンにはほかにも、半導体チップの設計に欠かせないソフトウェアやサービスを提供するCadence Design Systems(ケイデンス デザイン システムズ)やSynopsys(シノプシス)などの電子設計自動化(EDA)ソフトウェアを提供する企業、ASMLやApplied Materials(アプライド・マテリアルズ)などの半導体製造装置メーカーが含まれます。
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