世界規模の難局を幾度となく乗り越えてきたアート市場は、世界金融危機と新型コロナウイルス感染症の世界的流行という二重の経済ショックからも迅速に回復しました。世界のアート市場の美術品販売額は、新型コロナ危機発生に伴い22パーセント下落。しかし、2021年からは再び上昇に転じ、翌年は史上2番目に高い678億米ドルに到達しました。2023年を境に市場の拡大は止まったものの、同年のアート販売額は650億米ドルと、コロナショック前の数値を上回る結果となりました。2023年の世界の美術品取引件数は、2019年比で3パーセント減の3,940万件となっています。
2024年3月、アート・バーゼル(Art Basel)とUBSは、2023年の世界のアート市場を分析する報告書「グローバル アート マーケット レポート2024(Global Art Market Report 2024)」を発表しました。同報告書によると、36パーセントのアート・ディーラー(美術商)が今年は売上が増加すると予想している一方で、減少するとの回答は16パーセントにとどまりました。特に大手ディーラーは小規模事業者に比べて楽観的で、54パーセントが増収を見込んでいることがわかっています。
米国は過去10年にわたり、世界最大のアート市場として不動の地位を保ってきました。中国は世界第2位の市場となっており、英国は3位に転落しました。2023年の世界のアート販売額に占める米中英の割合は、全体の8割近くに迫りました。ファインアート(純粋美術)とNFT(非代替性トークン)の公開オークションの売上高においても、3か国が上位を独占していますが、ファインアートオークションの世界的拠点である米中の差はわずかです。
世界の2大オークションハウス
18世紀にロンドンで誕生したサザビーズ(Southeby’s)とクリスティーズ(Christie’s)は、世界最大の売上高を誇るオークションハウスです。2023年のサザビーズの総売上高は、前年比約1.5パーセント減の約79億米ドルとなりました。同年のクリスティーズの総売上高は、過去最高となった2022年から26パーセント減少し、約62億米ドルにとどまりました。サザビーズとクリスティーズに次ぐオークションハウスの世界最大手は、ヘリテージ・オークションズ(Heritage Auctions)、ボナムズ(Bonhams)、フィリップス(Phillips)です。売上高は、どのオークションハウスも20億米ドル以下となっています。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界各国でロックダウン(都市封鎖)措置が取られたことにより、オークションハウスやアートディーラーはビジネスのオンライン化を迫られました。またそれと並行して、2021年にクリプトアートやNFT(非代替性トークン)の人気が爆発的に上昇したことも、オンラインアート市場の拡大を加速させました。2020年に急成長を遂げた美術品・骨董品のオンライン売上高はその後大幅に減少したものの、コロナ前の約2倍の水準を維持しており、2023年時点では約120億米ドルに達しています。なお、この数値には、前年比で60パーセント以上減少したNFTアートやコレクティブルNFTの売上は含まれていません。パンデミック収束後も、オンラインでのアート販売は一定水準を保っていますが、NFTは人気に陰りが見えています。NFTアートの月間取引高からは、同市場が2021年を大きく下回る水準で安定的に推移するニューノーマル時代に突入したことが見てとれます。
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