【関西大学×Statista】
【Kansai University × Statista】マーケティング第一人者の陶山教授に訊く、デジタル図書館時代のデータの重要性
世界の主要な業界、市場調査や消費者動向に関するデータや統計を提供する世界最大級のデータプラットフォーム「スタティスタ」。連載「データの達人に会いに行く」では、様々な業界や職種でデータを扱うプロフェッショナルをお招きして、データとビジネスの関係を伺います。
今回お招きしたのは関西大学商学部の教授である陶山計介教授。日本商業学会会長や一般社団法人ブランド戦略研究所理事長も歴任されている、日本におけるビジネス教育の第一人者です。マーケティングやブランドを専門とし、大学で教鞭を執っている陶山教授は、ゼミ等教育の現場でもデータの活用を実践しています。
大学教育や図書館におけるデータ活用の現在と未来とは? 陶山教授にスタティスタ・ジャパン カントリーマネージャーの津乗が伺いました。
トレンドを追いかけるためにはデータが必要
津乗:
陶山教授は関西大学の教授、そしてブランド戦略研究所所長としてのお顔をお持ちですよね。
陶山:
関西大学の商学部に所属し、マーケティングマネジメント、ブランド戦略、流通戦略等を研究・教育しています。新型コロナウイルスの影響で現在は運営が難しいのですが、現在は例えば「英語で学ぶ現代ビジネス」ということで、マーケティングのバイブルである『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント』、ケビン・レーン・ケラーの『Strategic Brand Management』の原書を翻訳してもらいながら解説するという講義をしています。
関西大学商学部教授・ブランド戦略研究所所長・博士(経済学)
陶山 計介 – Keisuke Suyama
プロフィール
1982年、京都大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得。博士(経済学)。専門はブランド・マーケティング。訳書に『ブランド・エクイティ戦略』『ブランド優位の戦略』『バリュースペース戦略』(いずれもダイヤモンド社)、著書に『マーケティング戦略と需給斉合』(中央経済社)をはじめ、『日本型ブランド優位戦略』(ダイヤモンド社)、『マーケティング・ネットワーク論』 (有斐閣) 、『大阪ブランド・ルネッサンス』 (ミネルヴァ書房)等がある。常に現場に目を据え、トヨタ、リクルート、JH、ハウス、イズミヤ、大阪府等多数の企業、各種団体の幹部研修も行い、産学交流を推進している。 文科省、経産省等の専門委員や大阪ブランドコミッティ・プロデューサー等、学外活動多数。英国エジンバラ大学マネジメントスクール客員教授(2002年
スタティスタ・ジャパン株式会社 カントリーマネージャー 津乗 学
津乗:
ブランド戦略研究所はどういった経緯で設立されたのでしょうか。
陶山:
ブランド戦略研究会という研究会が発展した結果です。日本にも古くから「のれん」だったり、信用・信頼という概念はあるのですが、当時は近代的な「ブランド」という発想は欧米に比べて弱かった。そこを普及させていこうというのがひとつの目的です。
津乗:
海外からも学ぶべきところがあるということですよね。研究者・教育者・ブランド活動と様々な面をお持ちの陶山教授ですが、データ活用について意識するような出来事はありましたか?
陶山:
私も職業柄、もちろんデータは昔から活用しています。と言っても、昔のデータ収集は大変だしお金もかかりました。10年前にある調査で海外の調査会社にインタビューを委託したのですが、一人の回答あたり1万円だと言うのです。しっかりしたデータを集めなければいけないので仕方がないのですが、「データというのはお金がかかるものだ」と再認識したことを覚えています。
津乗:
確かに聞き込み調査は費用がかかりますよね。しかも10年後の現在においては、知らなければならないことは指数関数的に増えています。そんな中、学生はデータとどのように向きあっていますか?
陶山:
理論研究や歴史研究ならまだしも、現状分析や政策の研究をするときにはエビデンスが必要。じゃあそのエビデンスがどこにあるかと言うと、自分で収集するか、公開データや2次データを探す必要があります。
経済のマクロデータや有価証券報告書のようなミクロデータは、比較的問題意識の高い学生は積極的に見ています。私のゼミでは調査会社のデータベースや日経テレコン等を利用していますね。最近は様々な調査機関がネットでオープンにしている調査資料がありますし、優秀な学生は私達が驚くほど検索能力が高くて、「えっ、こんなデータあるの?」と私が驚くほどです。
とはいえデータは見つけてきただけでは意味がありません。そこからどういうインサイトを得るかというのはまた別の問題。ゼミ等では具体的なデータからそういったトレーニングをしています。
津乗:
おっしゃる通りですね。一方で集めるデータは日本の消費者を対象にしたものだったりしないでしょうか。グローバル化が当たり前になった昨今、企業も学生も海外に目を向けるのが通常だと思いますが、海外のデータやレポートを集めるのは、現状の大学・図書館のシステムで可能なのでしょうか。
陶山:
関西大学の図書館は、以前に比べるとかなりの統計・調査データ等が入手しやすいようになってきています。その中には調査会社の海外データもあるのですが、正直利用者からの評価はそれほど高くありません。
とは言えきちんとしたデータはあるところにはあるのです。大学側には「トライアルでサービスを入れてみてよ」と言ったり、長期契約でなくとも単年契約できないものなのか働きかけているところです。データはあれば使われるので、そこから大学自体のいわゆるデータ・ファクトに対するレベルが上がっていくと思っています。
津乗:
大学の図書館に限らずですが、情報をきちんとストックして、研究や調査、あるいはビジネスに活用するのは、ますます重要になってきていますよね。
陶山:
関西大学の図書館は図書・雑誌・新聞がかつて750万冊あって「アジアで最も蔵書数が多い」というキャッチフレーズを掲げていました。しかし今はオンラインの時代。データベースとしていつでもオンデマンドで手に入れられる状況が重要になって、電子図書館という考え方が通常です。
オンラインである電子図書館のメリットの一つは、時系列でデータが追いやすいことです。まさにStatistaが提供しているようなデータベースなら、「2020年までの10年間の推移」といったことがすぐにわかる。そういったトレンドを追いかけられるようになると、学生や教員にとっては非常に有益ですよね。
津乗:
オフラインとしての既存の図書館に電子図書館が加わることによって、どのような可能性が出てきますか?
陶山:
既存の図書館は情報やデータの宝庫で、これは間違いありません。書籍・雑誌、新聞等が一つのパッケージとなり知を形成されています。しかしながら、形あるデータは経年劣化し、次第に鮮度が落ちていきます。鮮度を保つのは図書館の重要な役割。つまり最新の情報・データにアクセスできる環境を整えることが肝要なんです。
その点電子図書館は有効です。電子図書館が機能すれば、学生が情報・データに基づいて自分の興味・関心がある事項の研究・調査がしやすくなる。そういったことに力や時間を投入できるというのは非常に価値がのあること。もちろん学生だけでなく教員にとってもです。
津乗:
特に2020年はコロナ禍で、講義がオンラインになったり大学に行けない影響で、調べものもこれまで以上にオンライン化が加速していくと思っていて、Statistaも頑張らないといけないと感じています。
陶山:
大学の教育や研究にとって電子データがいかに重要かついては共有されていると思いますが、体制なり組織、とりわけ予算が追いついていない。しかしコロナ禍のような出来事があると、やはり安全・安心をどうやって大学として担保するかという話がでてきて、その延長として、大学にいなくても調べ物ができるように、オンラインデータへのアクセシビリティを高めるという話は重要になってきます。
しかし図書館の蔵書数ではなく、どのぐらいの世界の情報データにアクセスできるかという点は非常に目に見えにくい。そういう意味では予算がなかなかとりにくいという面はあります。
津乗:
面白いポイントですね。蔵書数は目に見えるけど、データはいくらあっても視覚的にわからない。本はまとまった知識を体系的に得るという意味では非常に優れているし、他方日々アップデートされるようなデータが欲しいならオンラインのデータベースが優れていますよね。
陶山:
そうですね。データが日夜アップデートされていて、直近のデータがすぐに手に入るというのは非常に重要なんです。最近ゼミ生がある業界のデータを調べていたのですが、どうしても数年前のデータしか出てこないんです。そもそもデータがないのか、見つけられていないのかもわからない。ですがStatistaがデータをアップデートしてくれているなら、それもすぐにわかりますよね。
Statistaで短縮した調査時間を、分析に割く
津乗:
陶山教授にはStatistaを一定期間使っていただきました。感想を教えていただけますか?
陶山:
大学教育という意味では、Statistaのデータを読み解くのは、1~2年生では難しいかもしれません。まして英語ですからね。3年時からの専門的なゼミの研究や卒論あたりからやっと使い出せるといったところでしょうか。
陶山:
私に関して言えば、現在とある出版企画でアメリカのリテールの調査をしています。オンラインショッピングが台頭する中で、ウォルマートやターゲット、コストコ等既存の小売業がどういった対応をしているのかという研究です。その一環で、アメリカの小売業や消費者の最新状況を調べる必要があり、そのためにStatistaを使わせていただきました。
使ってみた感想ですが、ものすごく使いやすいですよね。リテールのキーワードや会社名をポンポンと入れると、レポートや統計データがズラーッと出てくる。しかも統計データだったら数値や表もはもちろん、グラフ化もされている。それをダウンロードすると、そのまますぐに資料に活用できて、非常に使い勝手がいいと感じました。むしろ候補レポートが多すぎて絞るのが大変な程です。
Statistaを使うことによって、アメリカの小売業や消費者の動向、経済・経営の実態等がリアルに頭に入ってきました。しかもビジュアルもきちんとされていて、ダウンロードしたらすぐ研究にも教育にも使える。そういう意味ですばらしいサービスだと思います。他の調査会社のものだと、数表が出ているだけのものが多い印象です。
津乗:
ありがとうございます。具体的にどんな点が便利でしたか?
陶山:
例えば、今までは任意の企業の業績を時系列で比較しようとすると、毎年のデータを1年ずつエクセルに入力していかなければなりませんが、Statistaなら数回クリックするだけでグラフまで出来上がる。ユーザーインターフェースがすごく洗練されているように思いました。
津乗:
まさに、様々なデータが瞬時に手元に手に入る利便性は、Statistaの強みです。Statistaに慣れてしまうと、他の調査会社のデータは物足りなく感じるというユーザーも少なくありません。
陶山教授が仰られるように、これまでいろいろな情報ソース、例えばアニュアルレポートだったり統計を探し出して、あるいは調査会社のサイトに見に行ったりしながら自分で情報をかき集めてまめるという作業は、Staistaに入っているデータならすべて不要になります。Statistaは「調べ物のイノベーション」なんですね。
陶山:
先程も申し上げたように、データは集めるだけでは意味がなくて、そこから意味を見いださなくてはなりません。しかしデータ収集には非常に時間がかかる。Statistaでその時間を短縮できるなら、後半の分析・解析・レポーティングにエネルギーを投入できるようになる。これは研究者や学生にとって素晴らしいことですよ。Statistaに限らずですが、情報データベースが大学に浸透してくれれば、大学教育や研究はレベルアップしていくと思います。
津乗:
ありがとうございます。商品をあって当たり前のように提供する水道哲学という言葉がありますが、データも水道から水が出るくらい当たり前にしなければいけないなと思っています。
Statistaも日本ローカライズを
津乗:
ここまではお褒めいただいたかと思いますが、逆にStatistaの足りないところをご指摘いただけますか?
陶山:
これは要望・期待なのですけれども、もう少し大胆にデータに基づいてレポートしていただいてもいいかなとは思います。つまりStatistaとしての見解を明示してもいいのではないかということです。もちろん利用者はそれを鵜呑みにするのではなく、どう解釈して評価するかは別次元の話です。
Statistaで何かを検索すると色々な数字が出てきますが、特に学生は「じゃあ、それをどう読んだらいいの?」と感じている気がします。もちろんStatistaの役割は情報提供なので「それは皆さんで考えてください」ということなのでしょうけれども、Statistaをより活用するということを考えた際には。一定のコメントなりがあった方がいいかもしれません。難しいのはわかりますが(笑)。
津乗:
ご認識のとおり、Statistaではデータは出しますが、突っ込んだ解釈や解説はしていません。調べ物はできるだけ手軽に簡便に高品質なものを。そのあとの解釈等はユーザーに任せるというポリシーで運営しています。
ところで、解説とは違いますが、Statistaでは毎年、データに基づいた未来予測を本にしているんです。地球単位のメガトレンドから、マクロトレンド、ミクロトレンド等、分野もテクノロジー、経済、社会、文化と多彩なファクトと予測をしています。
陶山:
これは毎年発刊しているんですか?
津乗:
毎年出しています。今年はコロナを受けて、予測も難しくなってはいますが… だからこそ「未来はどうなるんだろう」という関心は高まっているのを感じます。
こういったものをデータの入口として見ていただくと、「だからデータが必要なんだ」と直感的に理解できると思うので、是非学生の皆さんにも見せていただけたらと思っています。
陶山:
こういったある種の見本があるのはいいですよね。これを見て学生は、データから何を導き出すのかを考えるヒントになると思います。
陶山:
あとStatistaは全部英語なので、一部のよく使われる項目だけでも日本語になるといいかもしれませんね。例えば財務諸表分析をしているときに、英語で会計用語が出てきてもなんのことかわからないときがあるんですよ。
これから潜在的なユーザーを取り込んでいくという意味でいくと、ちょっとだけ加工度を上げていくなり、ちょっとだけ方向付けをしたりとか、ちょっと日本人向けにアレンジをするとか、そういうふうにすると、よりアクセシビリティが高くなってくると思います。
津乗:
その点はスタティスタ日本法人の課題として捉えています。陶山教授を始めユーザーの皆様から色々なフィードバックをいただき、すぐにとはいきませんが、少しずつ改善していきます。
陶山:
そうやって少しずつ「Statistaを使ってこんなことができました」「ヒット商品が出ました」といったサクセスストーリーができるといいですね。
津乗:
精進してまいります。本日はありがとうございました。
陶山:
ありがとうございました。
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