15年で大きく成長したSpotify
2008年10月7日、スポティファイ(Spotify)が欧州で音楽配信サービスの提供を開始した当初、スウェーデンに本社を置く名もないスタートアップ企業が世界最大の音楽プラットフォームへと成長するとは、誰も想像していなかったはずです。当時は音楽配信サービスの黎明期で、配信サービスが世界の音楽業界の収益に占めた割合はごくわずかでしたが、市場への早期参入がのちに功を奏する結果となります。
スポティファイは、長い年月をかけてユーザー数を伸ばし、サービス開始から5年が経過した2013年時点では、月間アクティブユーザー数(MAU)が約3千万人、有料会員数が800万人でした。以降、同社の月間アクティブユーザー数と有料会員数は成長を続け、2023年6月にそれぞれ5億5,100万人と2億2千万人に達しています。
ユーザー数の成長には目覚ましいものがありますが、企業価値300億米ドルともいわれるスポティファイは、創業以来赤字が続いています。同社の決算報告書によると、2022年は売上高が117億ユーロだったのに対し、純損失が4億3千万ユーロとなっています。売上の大半は、有料会員からの収益と考えられています。スポティファイの2009年以降の累積赤字は40億ユーロ近くにのぼるとみられ、少ないロイヤリティに対するアーティストの不満が高まっていることも相まって、音楽配信モデルの持続可能性について疑問が浮上しています。