導入事例

【福島大学×Statista 前編】

2023-09-19 | 発行元 Statista Japan

ペインポイントはビジネスチャンス?データを味方に、福島大学の遠藤教授と考える日本のジェンダーギャップ

活用事例:福島大学様

世界の主要な業界、市場調査や消費者動向に関するデータや統計を提供する世界最大級のデータプラットフォーム「Statista」。連載「データの達人に会いに行く」では、様々な業界や職種でデータを扱うプロフェッショナルをお招きして、データとビジネスの関係を伺っています。

今回、国立大学としては初めてStatistaを導入いただきました、福島大学経済経営学類教授の遠藤明子先生の所へ訪問しました。先生の研究内容と大学の個室トイレでの生理用品無料提供から見る日本のジェンダーギャップについてを前編に、教育現場でのデータの活用と遠藤先生が今注目しているフェムテックの分野とを後編に分け、スタティスタ・ジャパンのシニアキーアカウントマネジャー伊藤とカスタマーサクセスマネージャー水野が伺いました。

遠藤先生の研究テーマ〜デジタルで社会課題を解決

伊藤:
先生の研究テーマについて、お伺いできますでしょうか?

遠藤:
実は、大学院生の時から研究テーマには紆余曲折ありました。ただいつもどこか自分の中で社会的課題と経営学をつなぐテーマに取り組みたいと思っていました。大学で常勤職を得て数年経ち、地域のことで何かできたらと考えていた頃に、東日本大震災と福島第一原発事故が起こりました。そこで「考えているだけではなく、すぐに具体的な支援にまわり、行動に起こさねば」と感じました。

まず、当時はまだ科学的なデータが揃っておらず、原発事故の健康不安から福島県(中通り地方や浜通り地方)の子どもたちが外で遊ぶ機会が著しく減ってしまった状況でした。そこで、野外活動の専門家やキャンプ用品会社などの支援を受けながら、原発事故の影響が小さかった南会津町に中通り地方の子どもたちを招待し、自然体験を行うプログラムを南会津の市民団体と4年ほど共催しました。

子どもの運動不足問題が落ち着いた後は、風評被害によって福島県農産物の価格がなかなか回復しない問題にも取り組みました。郡山マルシェでの「郡山ブランド野菜」プロモーション活動の一環にゼミの学生と参加したり、データでその構造を分析するといったことです。

活用事例:福島大学 遠藤先生

プロフィール: 静岡英和学院大学人間社会学部専任講師、福島大学経済経営学類助教授・准教授を経て、2021年4月より現職。東日本大震災および福島第一原発事故の復興支援として、福島県中通り地方の子どもたちを対象とした南会津での自然体験プログラム(2011-2015年)、郡山マルシェでの「郡山ブランド野菜」プロモーション活動(2016-2019年)に学類ゼミ生とともに携わる。2021年からは「OiTr(オイテル)」を国立大学で初めて導入し、生理用品無料提供プログラムを推進。

一方、コロナ禍で大学の環境なども含め、世の中のデジタル化が強引に進みましたよね。私は個人的にデジタルなものに触れることが好きですが、あくまで素人だと思っていました。ところが意外にも自分の知識や使用経験が周りの人の役に立つことが少なくないことに気づきました。そこで、デジタルを切り口にしたら、私が貢献できる部分があるのではないかと感じ、デジタル化を通じた社会課題の解決に取り組みたいと思うようになりました。

なかでも2つの課題に注目しています。一つは「ジェンダーギャップをデジタル技術でどう解決できるか」、もう一つは「どうしたら高齢者がデジタル技術を受容できるか」です。

まず、女性として、フェミニズムやジェンダーギャップに関心をずっと持っていました。そんな中で2017年に、#MeToo(性暴力とハラスメントの被害経験をハッシュタグ「#MeToo」をつけてオンライン上に投稿する運動)が米国を起点に先進国で湧き上がり、「大変なことが起きた」と思ったのを覚えています。当事者としての実感が強かったためですが、当初はデジタル化とフェミニズムの動向をバラバラに追っていました。その後「フェムテック」(女性が抱えている課題を技術的に解決すること)というキーワードを目にしたとき、これを切り口に研究をしたいと強く感じ、今に至ります。

また、少子高齢化が進む日本において、高齢者のデジタル技術受容も大きな社会課題です。これについては、私が代表となってグループ研究に取り組んでおります。具体的にいうと、少子高齢化が特に著しい農村を対象に調査をしようと思っても、ツテもなしにインタビューに答えていただくことは難しいです。そのため農村とのネットワークがある本学食農学類の教員と一緒に取り組んでいます。食農学類の教員も農村のデジタル化をどうするか頭を悩ませていたようで、ぜひ一緒にやりましょうと言ってもらえました。

いずれのテーマも現状では研究コミュニティが重なりにくいため、これらをつなげることで私が貢献できる余地や役割もあるかなと感じています。

伊藤:
Statistaでも、フェムテックやデジタルペイメントに対する意識調査を行っているのですが、我々が実施しているのはオンラインサーベイのため、そもそも対象がオンラインにアクセスができる人に限られています。今まさにお話しいただいたような、例えば農村地域の高齢者の方々に調査を実施することは、食農学類のネットワークのある先生たちだからこその生の声が聞けそうですね。

そもそもインターネットでサーベイを答えられる人たちは、デジタルペイメントに対する抵抗感は比較的少ないと思います。一方で、そうじゃない方たちが何を思って、何にハードルを感じているのかは、実地調査でされていくのは我々としても自分達が持っていないデータですので、とても興味深いです。

水野:
社会課題を解決しながらビジネスにつなげられそうですね。

遠藤:
そうですね。そういうことができると良いですね。

もし私たちが農村で実施する調査データを今後発表できれば、ぜひStatistaにも載せていただけると嬉しいですね。

伊藤:
まさに、少子化・超高齢化社会である日本で、日本の農村に住んでいる高齢の方たちがどう考えていて、どのような行動様式なのか、先生の論文やサーベイの結果をStatistaに載せてもいいですか?と先生にいつかお伺いする日が来ることを心待ちにしています。

活用事例:福島大学様 キャンパス内風景

国立大学初の取り組み「生理用品無料提供」と日本におけるジェンダーギャップ

伊藤:
先生のもう一つのテーマでもあるフェムテックについてお話しを伺えればと思います。

先生がフェムテックをテーマに研究を取り組み始めたきっかけを先ほどお話ししていただきました。そこで、福島大学が国立大学で初めて生理用品を無償で提供する仕組みを導入した取り組みついて詳しくお伺いしたいと思います。今回、どういったきっかけで導入することになったのでしょうか?

遠藤:
オイテル(OiTr)という社会的企業のサービスを利用しているのですが、元々のきっかけは、オイテルがサービスを立ち上げ埼玉の商業施設で実証実験を開始する、というTwitterの投稿を昨年の3月にたまたま見かけたのがきっかけです。面白いと感じて、公式サイトを見てみました。すると、教育機関も対象になっていることがわかり「話を聞くだけならいいだろう」と思い、問い合わせフォームから連絡しました。始まったばかりのサービスで問い合わせ自体が初めてだったようでした。

大学全体で導入となると実施までに時間がかかるため、まずは私の所属する経済経営学類だけでもと思い、学類長や学類支援室長など管理職に確認しました。すると、「反対する理由もないし、遠藤先生が全て取りまとめるなら」と、私の所属学類に関してはあっけないぐらい簡単に決まりました。管理職にはとても感謝しています。また、学生の半数が女性の食農学類でも導入してもらえることになり、この2学類でまずは実施しました。

伊藤:
まずは一年くらい試してみて、学生にも質問紙調査を実施し、良い反応があるのでゆくゆくは全学類で実施を、という感じでしょうか?

遠藤:
はい、学生のニーズがあることを数値で示して、全学で導入したいと思っています。

水野:
私が学生時代にこのサービスがあったら良かったなと思います。

伊藤:
大学だけとは言わず、職場やショッピングモールなどありとあらゆるところにあったら本来だったらトイレットペーパーと同様の扱いで置いておいて欲しいですよね。

遠藤:
はい、オイテルもそのようなコンセプトから生まれたサービスで、そこに共感しました。

なお社会的に生理用品の無償提供が盛り上がるようになったのは、「生理の貧困」に脚光が集まったのも大きいです。これは、経済的に生理用品が買えない状態を指す概念です。そのような状態の方は日本社会にも確実にいるはずですが、割合で言うと1%ほどではとみています。こうした方々は生理に限らず、生活全般において貧困状態のはずです。そのため、生理用品を配って終わりではなく、政府・行政機関(公助)がパッケージとして生活支援プログラムをやらないといけないと思います。憲法が保障する、健康で文化的な最低限度の生活水準を割っているのですから。

一方、私は生理用品の無料提供プログラムを「ジェンダーギャップ解消」の一環として位置づけています。というのも女性(ここでは、性自認ではなく月経のある方)は、個人差があるものの、学業や仕事に集中できないなど男性のようには動けない時期が毎月のようにあるからです。ですから、生理用品の無料提供プログラムは「生理の貧困」に限定せず、生理に伴うストレスや金銭的負担を少しでも軽くし、組織的にジェンダーギャップを縮めるための取り組みだと強調していきたいです。

伊藤:
そうですよね。やはり「生理の貧困」というワードが印象的なので、そこが注目されがちと言うのはおっしゃる通りかなと感じます。

やはり生理用品の配り方も本当に必要な方に届けたいと思うと、実際に使用する場であるトイレに置いてある状態で、全ての女性トイレに必要な分がトイレットペーパーと同じように置いてあるのが理想のように感じながら、なぜ実現しないのだろうと感じます。

水野:
本当に必要ですよね。貧困の問題以前に必要なある意味インフラ的な部分で、生活を営むための平等性を確保するために最低限必要なものだと思います。

伊藤:
突然生理がくると慌てたり、常にカバンに入れておくにしても意外と嵩張ったり、あとは男性の目を気にして生理用品をトイレに持って行ったり、女性なら誰でもしたことがある経験も、生理用品がトイレに置いてありさえすれば全て解決しますよね。

福島大学は国立大学で初めての取り組みでメディアにも多く取り上げられていましたが、これをきっかけに福島大学全学に、そしてだんだんこのような取り組みも当たり前のように普及していくといいなと思いますが、その普及を妨げる課題や難しいポイントはどんなことだと感じでいますか?

遠藤:
オイテルを導入する場合、設置施設側の金銭的負担は正直大したものではないんです。ただ、大学という保守的な組織において、しかもボトムアップで新しい取り組みを始めるのは一筋縄でいきません。どうしたらボトムアップでも実現できるだろうと考えました。

その鍵は、マスメディアからの反響、そして学生ニーズの可視化、この2つだと思います。まずマスコミで取り上げられるためにとにかく「最初」であることにこだわりました。結果「国立大学で初」として取材をたくさん受けたことで、学内で話しを通しやすくなったと感じています。そして私が実施した質問紙調査から多数の学生がオイテルを求めていることが明らかになったので、これも大学執行部に伝えていきたいと思います。

伊藤:
組織を動かすためにもうまくデータを味方につけたいですね。

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