半導体生産能力の国・地域別シェア 2019年
半導体は、マイクロチップの基盤であり、現代社会のさまざまな場面で活躍しています。コンピュータやスマートフォンなどの家電製品に搭載されるほか、自動車産業を支える重要な部品でもあり、医療機器を制御し、ITネットワークインフラの正常な機能を維持するのに活用されています。
ボストン コンサルティング グループ(Boston Consulting Group)が公開したデータからは、高度な情報処理能力をもつコンピュータやプロセッサに使用される半導体の材料である「ウェハ」の製造が、台湾に一極集中している様子が見てとれます。また、10ナノメートル以下のロジック半導体を製造する工場も、その92パーセントが台湾に存在します。10ナノメートル以下のロジック半導体は、同じチップ面積により多くのトランジスタを乗せられるため、効率化・高速化が見込めるとされます。
台湾と韓国は、10ナノメートル以下の最先端プロセス開発の先駆けとなった地域です。他方で、2019年のデータをみると、他国の製造工場では10ナノメートル以下のロジック半導体の開発・製造が失敗に終わったことがわかります。同年、10ナノメートル以下のロジック半導体が世界全体の半導体生産に占めた割合はわずか2パーセントでしたが、業界における技術革新とともに今後シェアが拡大することが予想されています。このタイプのロジック半導体は、すでにスマートフォンなどの先端技術に活用されています。
新型コロナウイルス感染症のパンデミック期間中、各地域の半導体製造能力に大きな変化は見られませんでしたが、各国政府は徐々に対応をはじめています。コロナ禍でサプライチェーンが混乱したことによる半導体不足や、2022年に中国と台湾の間で地政学的緊張が高まったことを受けて、最先端半導体チップに依存している米国や欧州連合(EU)は、現状を打開するための取り組みに乗り出しました。しかし、半導体生産能力における各国間の大きな格差を考慮すると、実際に変革がもたらされるのはしばらく先かもしれません。例を挙げると、米・半導体メーカーのインテル(Intel)は、2023年5月時点で自社初となる10ナノメートル以下の製品を展開しはじめたばかりですが、台湾の半導体大手TSMCは同様の製品をすでに2016年に展開しています。
かつては世界の半導体製造の大半を欧州と米国が占め、半導体分野における技術革新への対応も迅速でした。1995年には、欧州と米国を合わせた半導体生産能力の世界シェアが36パーセントであったのに対し、現在は20パーセントを下回っています。1990年代前半の革新的技術とされる直径8インチ以上の大型ウェハのみに対象を絞ると、1990年時点では、米国と欧州における半導体生産能力の合計は、世界全体の80パーセントを超えていました。