事業に資金を投じて利益を得ることを投資といいますが、インパクト投資では、財務的な利益と並行して、社会または環境に目に見える変化や影響(インパクト)を生み出すことが目的とされます。インパクト投資を目指す投資家は、概してSRI(社会的責任投資)および/またはESG(環境・社会・ガバナンス)投資の考え方に従って行動します。SRIとESGは、双方ともに明確な定量的基準や国際社会に共通する目標を掲げる取り組みだからです。
日本でも投資や企業の経営方針にESGを採用する例が増えていますが、米国では、主に共和党保守派による反ESGの動きが活発化しています。2023年6月には、世界最大の資産運用会社ブラック・ロック(Black Rock)の最高経営責任者(CEO)であるラリー・フィンク(Larry Fink)氏が、ESGという言葉を「もう使うつもりはない」と発言し、波紋を広げています。フィンク氏はその理由として、米国の保守強硬派と左派の双方がESGという言葉を誤って理解し、政治的攻撃の材料として使用していることを指摘しています。同氏は以前から、気候変動対策などの重要性を投資先企業のCEOや株主に手紙で訴えかけてきましたが、同時に政治的な反発を受けてきた背景があります。
投資家の意思決定
持続可能なインパクト投資を行う人々は、財務上の利益を得ることと同時に、社会と環境に貢献することを目指しています。投資家が財務的意思決定を行うには、証券の特性のみならず、関連リスクをしっかりと把握する必要がありますが、インパクト投資につながる意思決定には2つのシナリオが考えられます。一つ目は、投資家本人が望むインパクトおよび/または利幅に基づいて、自らの意思で持続可能な金融商品を選ぶ場合です。さらに二つ目は、ESGやインパクト投資に関するトップダウンでの情報共有への依存度が高い投資家が、企業や政府の影響を受けて持続可能な投資を選択する場合です。後者の場合は、トップダウンで共有される情報の質が、投資家たちが変化の激しい社会問題や環境問題をどのように解釈するかを大きく左右します。
なお、インパクト投資への関心が急速に高まっている日本では、金融庁が2023年5月にインパクト投資に関する基本的指針案をまとめたと公表しました。インパクト投資の要件を明確化し、共通の理解を図ることが狙いとみられています。金融庁が定めたインパクト投資の要件は4つあり、投資の効果や収益性が事前計画で明確に示されること、追加的な効果が期待できること、効果を特定・測定・管理すること、市場や顧客に新たな変化をもたらすことが求められます。さらに、インパクト投資の促進を目的として、投資家、金融機関、大学などが参加する対話の場(コンソーシアム)が設けられる予定です。
インパクト投資の選択肢
インパクト投資は、財務的リターンと社会的リターンの両立が目標とされますが、2つを平等に捉える必要はありません。投資家は、個人的な目標や志向に合わせて、それぞれの要素に優先順位をつけることができます。たとえば、社会や環境に対するネガティブな影響の削減に重きを置く場合、多くの投資家は個人的方針に沿った形で現状を改善しようと取り組んでいる企業や、その分野で最も大きな影響力をもつ企業に投資を行います。しかし、どの企業が最も社会に貢献しているのかを見定めるのは容易ではありません。企業の影響力を評価するには、産業モデルやマネジメントモデルを考慮する必要があります。なぜなら、これらの要素がESG観点を踏まえたリスク評価を大きくゆがめる可能性があるからです。
なお、株式会社ソーシャルインパクト・リサーチが2023年6月から上場企業向けに提供を開始した「「AIパーパスーインパクト評価レポート提供サービス™️」は、企業のインパクト評価(パーパス(企業の存在価値・社会的意義)の定量評価)をAIが行うソリューションです。AIを活用することで、自社のパーパスを実現するまでのアクションプランや目標の設定、財務と両立度の評価、インパクト指標の提示など、投資家に自社の非財務的価値を発信できるツールとなっています。
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