新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、マレーシアではキャッシュレス決済の導入が全国的に加速しました。以前は現金払いが一般的でしたが、2020年3月から2021年12月まで続いた「移動制限令(Movement Control Oder、EMCO)」により、消費者は電子決済への移行を余儀なくされました。結果として、マレーシアは東南アジアで2番目にキャッシュレス化が進んだ国となっています。
また、テクノロジーに精通した消費者の間では、EC(電子商取引)市場の盛り上がりに後押しされる形で、クレジットカード、ネット銀行、デジタルウォレットなどの電子決済システムの普及も拡大しました。マレーシアではキャッシュレス決済がECサイトでの主な決済手段となっており、その内訳をみると、口座間決済(A2A)とクレジットカード決済が最大の割合を占めています。
マレーシアにおける電子決済での総取引額は、2023年時点では前年比およそ25パーセント増の約1,650億米ドルとなっており、2025年には約2,070億米ドルに達すると予測されています。同国政府は、デジタルエコノミーの成長を通じて高所得国家を目指す2030年までの10か年計画「マイデジタル(My Digital)」を発表しました。この国家政策に盛り込まれた行動計画の一つが、全政府機関における主要決済方法のキャッシュレス化です。「マイデジタル」の導入によって、目標達成は一層現実味を帯びたといえます。
マレーシアには高度なITインフラが整備されており、国のデジタル化を支えています。4G(第4世代通信)/LTEの高速モバイルデータ通信の利用率は総人口の97パーセントに達し、5G(第5世代通信)の利用率も、2022時点で47パーセントを超えています。つまりマレーシアでは、キャッシュレス決済を利用しやすい環境が整っているのです。
近年のデジタルウォレット利用者数の増加は、コロナ禍に市民の間で広まった衛生上の懸念に起因するところが大きいとされます。マレーシアにおける電子マネーの1人当たり年間取引額は、2022年時点では前年比38パーセント増の約2,100マレーシアリンギットに達しました。マレーシアで人気のモバイル決済アプリとしては、「タッチンゴー(Touch ‘n Go)」、「グラブペイ(Grabpay)」、「ブースト(Boost)」が挙げられます。現在はすべての経済活動がコロナ前の平常に戻りましたが、今後もキャッシュレス決済への移行は続くと考えられています。
また、BNPL(後払い決済)などの新しい決済サービスも人気を集めており、マレーシアのEC(電子商取引)サイトでのBNPLの取引額は、2026年には約9億米ドルに達する見込みです。キャッシュレス決済の利用者拡大に加え、政府のデジタル化政策も相まって、マレーシアの電子決済サービスは今後大きく成長するとみられています。
日本企業も、モバイル決済の利用が進むマレーシアに注目しています。NTTデータは2024年5月、マレーシアを代表する決済サービスプロバイダーであるGHLシステムズ(GHL Systems Berhad)の買収を発表しました。GHLシステムズは、マレーシアをはじめ、フィリピン、タイに48万台以上の決済端末を展開していることから、こうした国々でのモバイル決済事業への進出が買収の主な目的と推測されます。
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