わずか3日間で米国の大手地方銀行2行が相次いで倒産し、新たな金融危機の到来が危惧された2023年3月は、世界の金融業界の歴史に残る月となりました。米銀の経営破綻としては、2020年以来これが初めてのことでした。3月10日には、全米16位のシリコンバレーバンク(Silicon Valley Bank、SVB)が経営困難に陥り、約2,090億米ドルの資産が水の泡となりました。SVBの廃業は、米銀の倒産としては史上3番目の規模となっています。2日後の3月12日には、全米29位のシグネチャー・バンク(Signature Bank、SB)が、史上4番目の規模となる経営破綻に追い込まれました。2行の倒産により失われた資産額は、全米で25の銀行が破綻した2008年の世界金融危機で喪失した資産総額と同程度とみられています。
2023年3月に破綻したのは前述の2行のみですが、金融業界への信頼は崩れ落ち、米国の地方銀行の株価とナスダック銀行株指数の大幅な下落につながりました。そしてSVBとSBの倒産から2か月も絶たないうちに、ファースト リパブリック バンク(First Republic Bank)が廃業に追い込まれました。その規模は3月のSVBを上回り、米国史上2番目となっています。
金融不安が欧州にも波及
金融市場を混乱の渦に陥れたシリコンバレーバンク破綻の影響は、1週間余りで欧州に波及しました。スイス第2位の金融大手クレディ・スイス(Credit Suisse)は、長年にわたる経営ミスや不祥事の末、時価総額と株価が急落して経営危機に陥り、競合の大手金融グループUBSにより買収(救済合併)されました。金融不安が強まったことで、欧州では多くの銀行株が急落。2023年3月中旬には、欧州大手銀行の株価が月初比で平均15パーセント以上下落しました。
なお、UBSグループは2024年に入り、クレディ・スイス買収後に約12万人に膨らんだ従業員数の人員削減を進めています。UBSは、今後数年間で約60億米ドルの人件費削減を目指すと公表しており、セルジオ・エルモッティ(Sergio Ermotti)CEOは、スイスだけで約3千人を削減すると述べています。
2023年の銀行危機と2008年の世界金融危機の違い
2023年3月の銀行危機は憂慮すべき事態でしたが、2008年の世界金融危機とは状況が大きく異なります。世界金融危機の特徴は、投資リスクの所在が極めて不明瞭な金融商品や、規制・監督体制の整っていない金融システムが存在した点です。当時は、銀行による当局への報告義務が現在と比べてはるかに緩く、銀行のバランスシートは不透明でした。また銀行の自己資本比率と流動性比率も、規制が欠如していたため、極めて低水準でした。
一方、2023年時点では、バーゼルIII(2007~2009年の金融危機を契機に成立した金融規制の国際統一基準)によって銀行の自己資本比率や流動性比率の規制が導入されており、金融業界のリスク耐性が大幅に改善されています。世界金融危機後に銀行の普通株式等Tier1(CET1)と流動性カバレッジ比率(LCR)が急上昇したのは、このためです。欧州の銀行のCET1比率は、業績が芳しくない銀行でも4.5パーセントを超えています。
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