消費財・消費動向

世界的な食品価格高騰の主な要因とこれからの見通し

2023年8月18日
発行元 Statista Japan
食料品価格の高騰を表したイメージ画像。
Yellow Man via Getty Images
  • 2023年6月、欧州委員会統計局(ユーロスタット)は、ユーロ圏消費者物価指数(HICP)の速報値を公表しました。前年同月比で5.5パーセントの上昇となり、3か月連続で上昇率が縮小した結果となりました。 
  • 英国の小売大手Marks & Spencer(マークス&スペンサー)は2023年6月、食料品の値下げを発表しました。英国で相次ぐスーパーや食品小売り大手各社による値下げに倣う形で、インフレのペースが鈍化していることを示しているとされます。 
  • 米国労働省が2023年6月に公表した同年5月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で4パーセントの上昇となり、前月の4.9パーセントから大きく減少しました。食料品は6.7パーセント増と、9か月連続で上昇が鈍化しています。 

近年、物価の高騰が全世界の消費者を直撃しています。食料品価格も例外ではなく、先進国では食費の節約術に関する話題をよく耳にするようになりました。エネルギー価格が2022年に過去最高値を更新したことも相まって、日々の食事さえままならない人もいます。2022年以降、エネルギー価格は下落しましたが、2021年初頭と比べると依然として高い水準にとどまっています。世界的な食料不安と栄養不良は今後さらに深刻化する恐れがあり、各国の政府には、インフレによって購買力が急速に低下している消費者を下支えする政策が求められています。 

食料品の価格変動を計測する方法

物価指数は、さまざまなカテゴリーを横断して価格の上昇を計測するのに便利なツールですが、国連食糧農業機関(FAO)が公開するFAO食料価格指数(FFPI)は、一定期間の平均価格を100としたときの農産物価格動向を輸出量(額)により加重平均した価格指数です。FFPIでは、肉類、乳製品、穀類、植物油、砂糖という最も取引量の多い5品目が計測されます。 

2022年3月、 FFPIは159.7ポイントとなり、史上最高値を記録しました。しかし、同指数は一時的に急上昇した後、2022年初頭と同等の水準に戻り始めています。2023年5月には124.3ポイントまで減少し、2021年4月以降最低の数値となっています。このまま食品価格指数の低下が続けば、世界の消費者が高額な食費から解放される日もそう遠くはないかもしれません。 

消費者物価指数(CPI)は、各国における商品価格(消費者物価)の動向を加重平均して測定するツールです。CPIをみると、世界の物価指数が減少を始めていても、各国のインフレ状況は大きく異なることがわかります。中南米地域の一部の国では物価が高止まりしており、アルゼンチンでは、2023年4月に食料品のインフレ率が114.97パーセントと史上最高を更新しています。英国では、2023年4月に食料品と非アルコール飲料品のCPIが過去最高を記録したばかりですが、6月に入って、英国の小売大手Marks & Spencer(マークス&スペンサー)が食料品の値下げを発表しました。英国で相次ぐスーパーや食品小売り大手各社による食料品の値下げに倣う形で、同国においてインフレのペースが鈍化していることを示しているとみられています。 

2023年6月、欧州委員会統計局(ユーロスタット)は、ユーロ圏消費者物価指数(HICP)の速報値を公表しました。前年同月比では5.5パーセントの上昇となり、3か月連続でインフレ率が縮小した結果となりました。 

食料品の値上げの原因

前述のFFPIをみると、2020年の初夏から物価の上昇が始まったことが確認できます。新型コロナウイルス感染症の都市封鎖(ロックダウン)による世界的な製品不足や労働力不足の影響が表面化し始めたのが、この頃であったとみられています。さらに、2022年初頭に入って事態は悪化し、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年2月を挟んだ2022年1月から3月の間だけでも、物価が17パーセント以上上昇しています。ロシアとウクライナはともに、主要農産物の世界貿易において大きなシェアを占めています。侵攻前は、ウクライナが2021年/2022年度に小麦、小麦粉、小麦製品を前年度比40パーセント増となる2,400万トン以上輸出すると予測されていました。しかし、ウクライナとロシアの全農産物の生産が戦争による打撃を受け、世界的な品不足と、さらなる価格上昇につながる可能性が高いと考えられています。 

ロシア・ウクライナ戦争や、新型コロナウイルス感染症が世界全体に及ぼす長期的な影響に加え、農業に使用される肥料の価格を左右するエネルギー価格の高騰、貿易取引の停滞、農作物の不作、鳥インフルエンザの発生なども、主食となる食料品の価格を押し上げる要因となっています。たとえば、鳥インフルエンザの影響は、米国における卵の価格高騰にみられます。2021年12月から2022年にかけて、卵は価格上昇が最も顕著だった食料品で、CPIの前年比上昇率は59.9パーセントにのぼりました。 

米国労働省が2023年6月に公表した同年5月の同国の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で4パーセントの上昇となり、前月の4.9パーセントから大きく減少しました。食料品は6.7パーセント増と、9か月連続で上昇が鈍化しています 

消費者の反応

ある調査によると、米国の消費者は2022年を通じてさまざまな食料品が値上げの対象となることを懸念していたことがわかっています。なかでも、米国の消費者が最も注目していたのは、肉、乳製品、農作物の価格でした。同様に、カナダの消費者も、大半が数か月以内に物価が上昇すると考えていたことがわかっています。こうした価格上昇による購買行動の変化としては、より低価格なブランドへの移行やセール品の購入、小売店の変更などが挙げられます。プライベートブランド(PB)商品は、一般的により安価な代替品とされますが、インフレ率が最も高い食品においては、プライベートブランド商品の売り上げが増加する可能性があります。最新の調査では、欧州の消費者の半数がプライベートブランド商品を購入した経験があり、15パーセントが「近い将来に購入予定である」と回答しています。 


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