世界の靴・履物市場は、数千億米ドル規模の巨大産業です。アパレル産業の一部である同市場の主な製品には、靴・シューズ、スニーカー、高級靴、アスレチックシューズ（スポーツ・トレーニング用シューズ）などが挙げられます。素材は、本革（天然皮革）、合皮（人工皮革、合成皮革）、天然繊維、合成繊維などさまざまです。2023年の靴・履物の世界市場規模は、約4千億米ドルに達したと推定されています。靴・履物小売専門の企業では、ドイツ創業のダイヒマン（Deichmann）が世界最大で、2022年の売上高は69億米ドルに達しました。
靴の主要な生産・輸入国
2022年の世界の靴生産量は約240億足にのぼりました。これは、供給が、新型コロナウイルス感染症のパンデミック前の安定水準であった年間およそ230億足から240億足に戻ったことを意味します。靴・履物の生産の大半はアジアに集中しており、世界の総生産量の87パーセント以上を同地域が占めています。靴・履物の主な輸入国には、米国、日本、フランスが挙げられます。そのなかでも米国は、輸入量が他国と比べて圧倒的に多く、2022年は約27億足にのぼりました。対して2位のドイツは、同年におよそ7億9千万足を輸入しています。
アスレチックシューズの人気上昇
世界の靴・履物市場におけるトレンドの一つが、アスレチックシューズの人気の高まりです。アスレチックシューズは、スポーツ用のみならず、日常のファッションアイテム（アスレジャー）として広く普及しています。世界のアスレチックシューズ市場は、2023年にはパンデミック前の水準に回復したとみられています。同市場は、今後数年にわたって成長を続け、2028年には650億米ドル規模に達する見込みです。米国は、2022年のアスレチックシューズの国別売上高ランキングにおいても世界1位で、2位は中国でした。
業界をリードするナイキ（Nike）
世界の靴・履物業界には、スポーツウェアブランドをはじめとする巨大な多国籍企業がいくつも参入しています。なかでも最も知名度が高いのがナイキです。2022年のナイキの靴・履物部門の売上高は、全世界で約291億米ドルに達しており、直接的な競合であるアディダス（Adidas）とプーマ（Puma）に大きく水をあけています。ナイキは、2022/2023年のアパレルおよび靴・履物小売企業の世界ランキングで、高級ブランド大手LVMH（ルイヴィトンモエヘネシー）に次いで総合2位となっています。業界の先頭を走るナイキですが、マクロ経済の不調は同社の経営にも暗い影を落としています。2024年2月、ナイキは全従業員の約2パーセントに当たる1600人以上の人員を削減すると発表しました。今年は靴・シューズの売上が振るわない見込みで、同社はコスト削減の取り組みを進めています。
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