サステナブルファッションは、明確に定義するのが難しい概念です。異なる基準が多数存在し、 “プラスチックフリー”、“オーガニック”、“リサイクル素材”など、サステナブル(Sustainable、持続可能)であることを示唆する語句がファッション業界に溢れているためです。このような語句のなかには、矛盾しているものもあります。たとえば、リサイクル可能なプラスチックは持続可能な素材と見なされますが、プラスチックそのものが環境に悪影響だという意見も存在します。
このように、環境への負荷が大きい商品ですら“サステナブル(持続可能)な商品”と称して販売されることが多いため、消費者にとって環境にやさしい衣類を見分けるのは至難の業です。米国で行われた調査では、回答者の半数以上が「どのファッションアイテムが環境に配慮した商品なのか判断しづらい」と答えています。
とはいえ、サステナブルファッションの世界市場規模は、過去10年間拡大し続けており、今後もこの傾向は継続することが見込まれます。同市場規模は、2026年までにファッション市場全体の6パーセントを超えると予測されており、拡大加速の主な原動力は、若い世代であると考えられています。2022年時点では、ミレニアル世代とZ世代の支出額が米国におけるサステナブルファッションの売上高に占める割合は、推定68パーセントだったとみられています。
サステナブルファッションへの関心は、日本でも高まりつつあります。環境省のアンケート調査では、日本人の半数以上がサステナブルファッションを認知しており、4割弱が「関心をもっている」または「具体的な取り組みを行っている」と回答したことがわかっています。また、35パーセント以上の人が「衣服を処分するときに、回収しやすくする」ことが重要であると考えており、企業や行政にも対応が求められています。
環境への負荷
環境負荷が非常に大きいとされるファッション産業においては、温室効果ガスの排出や水の大量消費、プラスチックごみの発生などが懸念されています。現状が変わらなければ、2030年には産業全体で年間推定12億7千万トンに相当する二酸化炭素(CO2)が排出されるようになるとの予測もあります。なお、最も大量のCO2が排出されるのは、衣服の製造段階においてです。
全世界で生産される衣料用繊維の64パーセントは、ポリエステルを含む化学繊維です。ポリエステルは、生分解されないため、有害なマイクロファイバーとなって自然界に半永久的に残ります。世界のアパレル消費量は、今後数年にわたって増加を続ける見通しであることから、環境への負荷は悪化の一途をたどると予想されています。
ファッション企業の環境対策
消費者は、サステナビリティの重要性をより強く認識し、購買決定を左右する重要な要素として捉えるようになっていることから、環境負荷削減の取り組みに力を入れるファッション企業が増えています。こうした企業は、自社のカーボン・フットプリントを重要な指標のひとつに掲げています。カーボン・フットプリントとは、商品またはサービスのライフサイクルの各段階で排出された温室効果ガスの全体量をCO2に換算してあらわしたものです。
企業によるCO2排出量削減に向けた対策はさまざま存在しますが、最も一般的なのは、材料をよりサステナブルなものに切り替え、持続可能な包装・梱包資材を使用し、製造・生産を国内に回帰させる方法です。しかし、こうした取り組みを消費者に正しく評価・認識してもらうことは容易ではありません。ファッション業界の経営者を対象に行われた調査によると、「サステナビリティの評価基準が存在しないこと」や、「サステナブル素材の価格」が最も大きな課題となっています。持続可能な素材は高額なため、企業は消費者に価格転嫁せざるを得ず、消費者の満足を得られる値段で商品を提供できないのです。
循環型ファッション
アパレル産業のサステナビリティ向上を促進する方法のひとつとして幅広い支持を受けているのが、循環型ファッションへの転換です。循環型ファッションには、主にリセール(中古販売)、レンタル(貸借)、リペア(修繕)、リサイクル(再利用)の4つのカテゴリーが存在します。消費者は、中古衣料ECの「スレッドアップ(ThredUp)」やファッション特化型のフリマアプリ「ポッシュマーク(Poshmark)」などで古着を販売・購入することができます。
循環型ファッションは、廃棄される衣類の削減にはつながるものの、持続的な変化をもたらすには限界があるため、ほかの対策と組み合わせる必要があります。その対策例としては、購入する服の数を減らすことによる消費の削減が挙げられ、実際に消費者の多くは、サステナビリティのために衣類の購入を控える意思を示しています。また、環境への負荷をより小さく抑えることのできる新しいバイオマテリアル(生物素材)の開発なども、対策のひとつとして考えられています。
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