新しいアイデアが次々と生み出され、競争が激しい玩具(おもちゃ)の世界市場では、毎年数十億米ドルの収益が発生しています。プラスチック製の組み立てブロックで知られるデンマークの玩具会社レゴ(Lego Group)は、2022年の売上高が約93億米ドルに達し、世界市場トップの座に就いています。レゴに次ぐ業界2位は、東京都に本社を置くバンダイナムコホールディングスで、2023年度の売上高は約75億米ドルにのぼりました。ハズブロ(Hasbro)、マテル(Mattel)、ジャックス・パシフィック(Jakks Pacific)は、米国を代表する世界最大級の玩具メーカーです。
2023年7月に公開された米玩具大手マテルの着せ替え人形「バービー」の実写映画は、2024年1月時点での世界興行収入が約14.5億米ドルと大ヒットを記録しました。映画『バービー』は、過去数十年間にわたり玩具の製造と販売に注力してきたマテル社にとって、自社が擁する知的財産を映画化する初の試みです。マテル社の2023年第3四半期の売上高は、前年同期比で約9パーセント増の約19億米ドルに達し、1株当たり利益も予想を上回る1.08米ドルに増えています。当初の市場予測では、2023年第3四半期は、売上高が18.3億米ドル、1株当たり利益が86セントとなる見通しでした。イノン・クライツ(Ynon Kreiz)CEOは、同社にとって映画『バービー』は「マイルストーン」であり、バービー人形とバービー・ドリームハウス(DreamHouse)の売上を加速させ、当該四半期の業績を押し上げる要素となったと称賛しています。マテル社は、利益の増加が「第一に売上構成差(モデルミックス)の好転に起因し、主に映画関連である」としています。
米国の玩具市場
世界の主要な玩具企業5社のうち3社は米国企業です。とくに米国を中心とする北米市場は、3社にとって最も収益性が高く、重要な市場のひとつとなっています。玩具産業は2022年、米国に1千億米ドル以上の経済効果をもたらしたとされ、雇用創出効果は約57万3千人にとどまりました。
玩具の輸出入動向
米国は、世界最大の玩具輸入国であり、輸入額で他国を大きく引き離しています。2022年には、過去12年間で最多となる約550億米ドル相当の玩具、人形、スポーツ用品を輸入しており、輸入額は前年から増えています。なお、世界最大の玩具輸出国は中国で、米国が輸入した玩具、ゲーム、スポーツ用品の約80パーセントが中国製です。一方で米国は、約73.9億米ドル相当の玩具を輸出しており、そのうち約27.9億米ドル相当の商品が米国にとって最も重要な輸出相手国であるカナダに輸出されています。
日本の玩具市場
2022年度の日本の玩具市場規模は9,525億円に達し、前年度の8,926億円から増加しています。玩具の国内生産量は近年上昇傾向にあり、メーカーは最新のトレンドや最先端技術を取りいれるなどして、市場拡大を図っています。
日本の玩具市場は、アミューズメント業界や家庭用ゲーム機業界と密接な関係にあります。国内の玩具メーカー各社は、子会社やライセンス契約を通じて、関連する部門の他社ブランドとのコラボレーションを積極的に行っています。子ども向け玩具メーカーのタカラトミーは、ポケモンやディズニー(Disney)などの知的財産の商品化権を獲得し、ライセンス商品でポートフォリオを拡大することによって成功を収めた企業の一例です。一方でサンリオのように、自社で知的財産権を所有するキャラクターの商品を直接生産・販売するブランドも存在します。
子ども向けおもちゃ売り場は総合量販店や大型小売店の定番ですが、国内にはファンダム(特定の作品の熱心なファン集団)の大人をターゲットにしたキャラクターグッズ専門店や期間限定のポップアップストアも、数多く存在します。また、日本の特徴的なライセンス玩具販売チャネルとしては、アミューズメント業界が挙げられます。ゲームセンターなどのアミューズメント施設では、ぬいぐるみなどのキャラクター限定グッズがアーケードゲーム機専用の景品として提供されています。
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