快走を続ける中国の電気自動車(EV)市場に迫る

2023年8月21日 | 発行元 Statista Japan
電気自動車のイメージ画像。
Tingting Ji via Getty Images
  • 2023年4月、米国の電気自動車(EV)大手のテスラ(Tesla)の中国法人は、自社製のEVに限られていた中国国内での充電スタンドの利用を、他社製のEVにも開放することを公表しました。 
  • 中国を代表するEVメーカーの比亜迪(BYD)は、2023年7月にブラジルに新しい工場を設置し、2024年からEVの生産を開始すると発表しました。南米地域ではEVの普及が遅れていることから、市場シェアの拡大につながることが期待されています。 
  • 中国大手電気自動車メーカーの上海汽車(SAIC)は2023年7月、欧州でEVを生産するための工場の建設予定地を選定する作業を始めたことを明らかにしました。 

温室効果ガスの排出量が少なく、エネルギー効率の高い電気自動車(EV)は、ほかの多くの国と同様に、中国でも持続可能な交通を実現する手段とみなされています。さらに、中国には世界最大のEV産業が存在します。中国政府はEVの研究開発に多額の資金を投じており、2021年にローランド・ベルガー(Roland Berger)が発表した「Eモビリティ・インデックス (E-mobility index)」では、中国が最高得点を獲得しました。2021年の中国のEV生産台数は約350万台に上り、前年比で1.6倍になりました。同国のEV市場の売上高は、2021年に約1,022億米ドルに達し、アジア太平洋地域で最大となっています。 

バッテリー式電気自動車(BEV)の普及拡大

中国では、「電気自動車」という言葉が「新エネルギー自動車」や「代替エネルギー自動車」の同義語として用いられることがありますが、燃料電池電気自動車(FCEV)だけはこれに含まれていません。中国ではバッテリー式電気自動車(BEV)のほうが、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)よりも人気があり、2021年の販売台数をみると、BEVが約290万台、PHEVが約60万台となっています。同年の中国におけるBEVの自動車市場シェアは10.9パーセントに急成長しており、今後さらに増加すると予想されています。二酸化炭素(CO2)の排出量がゼロで、化石燃料への依存から脱却できる上に、騒音もほとんど発生しない点が、中国におけるBEV普及拡大の要因とみられています。それに加え、中国ではEV用の充電インフラの拡充が進んでおり、BEVを所有することがより魅力的になっています。中国のEV充電設備は、2022年までに公共用が180万基近く設置され、民間のEV用充電スタンドの数は約340万基に達しています。 

とはいえ、BEVはバッテリー容量が限られていることから、PHEVに比べて最大航続距離が短いという欠点があります。しかし、短い航続距離は中国の消費者によってそれほど大きな問題ではないようです。2021年10月に実施されたオンライン顧客調査によると、中国の消費者はEVの最大航続距離が258マイル(約415キロメートル)であれば購入を検討するという結果が出ています。一方、米国の回答者は、航続距離が518マイル(約834キロメートル)は必要であると答えています。 

2023年4月、米国のEV大手テスラ(Tesla)の中国法人は、自社製のEVに限られていた中国国内での充電スタンドの利用を、他社製のEVにも開放することを公表しました。利用可能な充電スタンドが増えることで、EVの購入を検討する人々の懸念材料である航続距離に対する不安が軽減され、EVの普及を後押しするであろうと評価されています。 

Statistaによるこのインフォグラフィックは、2022年の各国の新車登録台数に電気自動車(EV)が占める割合を示したものです。
出典元:statista.com

売れ筋のEVブランド

EVの世界的な普及に伴い、中国のEVメーカーが知名度を上げています。中国EV最大手のBYDは2022年に18.4パーセントのEV世界市場シェアを獲得し、米テスラとドイツのフォルクスワーゲン・グループ(Volks Wagen Group)がこれに次いでいます。また、BYDは2023年7月、ブラジルに新しい工場を設置し、2024年からEV乗用車の生産を開始すると発表しました。南米地域ではEVの普及が遅れていることから、同社による市場シェアのさらなる拡大につながることが期待されています。 

なお、2022年に世界で最も売れたEVランキングでは、上位10位のうち7車種が中国車でした。中国の乗用BEV部門では、2021年に同国で42万4千台以上を販売した合弁企業の上汽通用五菱汽車(SAIC-GM-Wuling)が1位にランクインし、テスラとBYDを抜いています。同社の「宏光(Hong Guang)MINI EV」は、テスラの「モデル3」に次いで、2022年に世界で4番目に売れたEVとなりました。上汽通用五菱汽車に出資する中国大手EVメーカーの上海汽車(SAIC)は2023年7月、欧州でEVを生産するための工場の建設予定地を選定する作業を始めたことを明らかにしました。上海汽車が2023年第1四半期に海外販売した自動車は53万台にのぼるとされ、同社「MG」ブランドの欧州での販売台数は倍増したとみられています。 


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