製造・輸送

躍進する世界のEV(電気自動車)スタートアップ業界

2024年4月9日 | 発行元 Statista Japan
充電スタンドでEV(電気自動者)を充電する男性
Alina Spiridonova via Getty Images
  • 2024年2月時点では、評価額が約142億米ドルに達した中国のEVメーカー、AION(埃安)が、気候テックユニコーンの評価額ランキングで世界第2位となっています。
  • 2024年1月、スウェーデンのリチウムイオン電池メーカー、ノースボルト(Northvolt)は、グリーンローンによって50億米ドルを調達したと発表しました。

新型コロナウイルスのパンデミックがはじまって以来、世界のEV(電気自動車)市場は急速に拡大しています。消費者の環境意識の高まりや、輸送部門の脱炭素化を目指す各国政府の支援が追い風となった形です。EVへの関心が高まったことにより、従来の自動車メーカーが既存車種を電動化するきっかけを得た一方で、新興メーカーも自動車市場に参入する機会を得ました。2023年9月時点の予測では、市場は今後も成長を続け、2028年には世界全体での収益が9,067億米ドルに達する見通しです。投資家と消費者の双方がこの成長産業に注目しており、2035年には、自動車産業のプロフィットプールにBEV(バッテリー式電気自動車)とAV(自動運転車)の新車販売が占める割合が2021年の44倍に増加すると予測されています。

2022年時点では、モビリティ関連の気候テックスタートアップへの投資額が、過去最高水準に達しています。米国におけるテスラ(Tesla)の成功も手伝って、米州は、地域別にみた低公害車スタートアップへの投資額が世界最高となっています。中国の企業も、世界のEVスタートアップの資金調達額ランキング気候テックユニコーンの評価額ランキングで常に上位にランクインしています。

EVスタートアップが抱える課題

世界最大のEV市場である中国は、政府系ファンドの設立や低利融資制度の導入などの政策を通じて、自国のスタートアップが事業を拡大するのに有利な経済的条件を作り出しました。2024年時点では、評価額が約142億米ドルに達した中国のEVメーカー、AION(埃安)が、評価額が世界第2位の気候テックユニコーンです。同社は、2022年の中国におけるEVの新車販売台数ランキングでも5位に入っています。

しかし、自国のEVスタートアップにとって有利な政策が行われているにもかかわらず、中国では市場の寡占化が進んでいます。ロシアのウクライナ侵攻で原材料価格が変動し、テスラが2023年に一部車種の販売価格を引き下げたことで、EVの価格競争が激化。中国のEVスタートアップを巡る環境は、一層厳しさを増しています。中国の威馬汽車技術(WMモーター・テクノロジー)は、2021年に約4万4,200台のEVを販売しましたが、翌年は33パーセント減の約2万9千台となっています。2023年10月、同社は業績不振を理由に、上海の裁判所に破産を申請しました。

経済的課題に直面しているのは、中国のEVスタートアップだけではありません。2023年8月時点で資金調達額が最も多かった米国のEVスタートアップは、ファラデー・フューチャー(Faraday Future)とルーシッド・モーターズ(Lucid Motors)です。ルーシッド・モーターズは、2022年時点で最も航続距離の長いEVを開発した企業としても知られています。しかし、2社ともに2022年度は純損失を計上しており、ルーシッド・モーターズは13億米ドル、ファラデー・フューチャーは5億5,207万米ドルの赤字でした。

このインフォグラフィックスは、2022年のプラグイン電気自動車(PEV)1,000台当たりの各国の充電ステーション数を示している。
出典元:statista.com

EV関連の革新的技術への投資

EVスタートアップは、収益化を達成するまでに数多くの難題に直面してきました。変化が絶えない市場であることから、EVメーカーは、革新的技術の開発や特許の取得などの研究開発(R&D)に力を注いでいます。

また、投資は、EV関連の技術革新において重要な役割を果たします。2021年の世界のモビリティスタートアップによる資金調達ラウンド数は、100メガラウンドを超えました。メガラウンドとは、1回の調達額が1億米ドル以上の投資ラウンドのことを指します。2009年から2021年までに世界全体で655億米ドルの資金を調達した「低公害車部門」は、「モビリティサービス」、「コネクテッドカー/自動運転車」に次いで、3番目に人気の高いEVスタートアップ部門です。しかし、大半のベンチャーキャピタル(VC)は、アーリーステージのEVスタートアップへの投資よりも、グロースステージ(ミドル・レイターステージ)のEV企業への投資を積極的に行っていることがわかっています。アーリーステージの企業は、設備投資などに多額の資金を必要とする一方で、収益化が難しいため、VCに敬遠される傾向があります。

一方、VCからのアーリーステージおよびグロースステージの投資額が最大の分野は、EV充電技術です。車載電池メーカーも、VCからの投資額が多い業態となっています。気候テックユニコーンの評価額ランキングで世界第4位のリチウムイオン電池メーカー、ノースボルト(Northvolt)は、2024年1月、グリーンローンによって50億米ドルを調達したと発表しました。グリーンローンとは、環境改善効果のある事業に必要な資金を調達する際に受け取る融資のことです。今回ノースボルトが調達した資金は、欧州発のサーキュラーエコノミーを実現するギガファクトリーやバッテリー工場を拡張する元手となる見込みです。


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