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サプライチェーン・マネジメント:課題と未来の動向

2023年10月9日 | 発行元 Statista Japan
男性はヘルメットを着用し、安全ベストを着て、金属製のコンテナを背景にタブレットで何かを確認しています。在庫と物流管理のコンセプト画像。
AnanR2107 via Getty Images
  • アジア開発銀行(ADB)が2023年3月に発表した報告書では、グローバル バリュー チェーン(GVC)は、コロナ禍の影響に対し予想以上に強靭であったものの、ASEAN(東南アジア諸国連合)は、将来のパンデミック、気候変動、地政学的不安定性などに備えてGVCにおける地位を強化する必要があるとしています。 
  • 欧州理事会は2023年7月、欧州の半導体エコシステムおよび生産拠点の拡大を図る「欧州半導体法(European Chips Act)」を承認しました。
  • 2022年に発表されたある報告書によると、都市の自然や生物多様性が失われることにより、経済活動に混乱がもたらされるリスクが最も高い産業部門は、サプライチェーンおよび運輸業であることがわかっています。

今日の世界では、国民経済が相互に密接な関係で結ばれており、何百万もの事業がさまざまな国と地域を横断して展開されています。経済における円滑な連携は、グローバル経済が正常に機能するための必須条件です。サプライチェーン(供給網)・マネジメントとは、製品に関わるカネ、モノ、情報の流れを統括し、生産、流通、販売、在庫などの情報を管理・分析するマネジメント手法のことです。また、サプライチェーン・ネットワークとは、ヒトや組織、資源、情報で構成される商業エコシステムのことで、家計、企業、政府の経済主体間における複雑かつダイナミックな需給ネットワークのことを指します。

国際貿易の拡大は、サプライチェーン・マネジメントの重要性が高まるきっかけとなり、サプライチェーン・マネジメントの世界市場規模は、2020年時点で約160億米ドルに達しています。また、サプライチェーン マネジメント ソフトウェアと購買・調達管理システムの売上高は、2019年までの10年間で2倍以上に拡大しました。業務の流れを最適化するために国をまたがって商品やサービスの供給・調達を行うサプライチェーン・ネットワークは、グローバル バリュー チェーン(GVC)と呼ばれ、国際貿易の分野において一般的な生産・製造工程として広く認められています。

アジア開発銀行(ADB)が2023年3月に発表した報告書では、グローバル バリュー チェーン(GVC)はコロナ禍の影響に対し予想以上に強靭であったものの、東南アジア諸国連合(ASEAN)は将来のパンデミック、気候変動、地政学的リスクに備えてGVCにおける地位を強化する必要があるとしています。また、GVCの「グリーン化」にも言及しており、ASEAN諸国は、気候変動に配慮した貿易やグリーンな交通インフラを推進する必要があると伝えています。

グローバル バリュー チェーン(GVC)

サプライチェーンが正常に機能している状態であれば、生産・製造工程全体にわたる企業間の国際的な連携は、業務の効率化につながります。しかし、こうした緊密な連携はサプライチェーンに混乱が生じると深刻な事態を招きかねません。一部の産業は、ほかの産業に比べて供給網の混乱に対してより脆弱です。サプライチェーンの混乱は、グローバル バリュー チェーン(GVC)への依存度が高い産業に深刻かつ持続的な打撃を与える可能性が高いとみられています。先例としては、世界的な半導体不足に窮した世界の自動車産業が挙げられます。

こうした背景から、GVCへの依存度を削減しようとする動きも各国では見られます。欧州理事会は2023年7月、欧州の半導体エコシステムおよび生産拠点の拡充を目指す「欧州半導体法(European Chips Act)」を承認しました。欧州半導体法では、2030年までに欧州半導体市場の世界シェアを足元の10パーセントから20パーセントに拡大することを目標に掲げています。欧州連合(EU)においては、同法が欧州の半導体産業再興や、海外のサプライヤーに対する依存度の引き下げにつながることに期待が寄せられています。

サプライチェーン経済を構成する企業

売上高で見ると、2020年に世界のサプライチェーン マネジメント ソフトウェア市場をリードしていたのはSAPオラクル(Oracle)です。ドイツに本社を置くSAPは同年、ソフトウェアサポート部門において115億ユーロを超える売上を達成しています。

サプライチェーン・ネットワークを構成する個々の企業や組織は、サプライチェーンのシステムを形作り、全体に影響をおよぼす力をもっています。革新的技術が市場にもたらされると、そのアイデアは瞬く間に拡散します。サプライチェーン業界で働く専門家を対象としたある調査では、約3分の1の企業で最先端在庫管理ツールやネットワーク最適化ツールが導入済みであることが判明しており、市場での競争優位性維持が導入の目的とみられています。

また、利益最大化に加え、気候変動による自然災害リスクを軽減する必要が生じたことで、サプライチェーン企業は対策を迫られています。

2022年に発表されたある報告書によると、都市の自然や生物多様性が失われることにより、経済活動に混乱がもたらされるリスクが最も高い産業部門は、サプライチェーンおよび運輸業であることがわかっています。サプライチェーンの混乱リスクの値は84と、エレクトロニクス産業(スコア39)の倍以上になっています。

サプライチェーン・マネジメントのこれから

長期化した新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、グローバル バリュー チェーンに甚大な打撃を与えました。しかし、サプライチェーン・マネジメント業界は今後も存続し、成長する世界経済にとって不可欠な産業となっていくと考えられています。サプライチェーン・マネジメントの世界市場規模は、今後10年で倍以上に拡大すると予想されており、サプライチェーン マネジメント ソフトウェア市場においても、今後数年で大幅な成長が見込まれています。

第4次産業革命(インダストリー4.0)によって製造・生産工程が根本的に変化する可能性はありますが、サプライチェーン・マネジメントがどのような影響を受けるかはいまだに不透明です。工業生産が全体的に成長し、国や地域を超えた経済交流がさらに活発化すれば、サプライチェーン・マネジメント市場はこれからも拡大し続けていくと考えられます。


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