鉄鋼は、現代社会に欠かせない資材です。インフラ設備や建造物、自動車の製造工程で大量の鉄と鉄鋼が使われていることからも、このことは容易に推察できます。中国は、近代化の過程で鉄と鉄鋼の高い生産能力を構築し、年間粗鋼生産量が2年連続で10億トンを超える、世界最大の鉄鋼生産国となっています。
中国で生産される鉄鋼の大半は国内向けですが、輸出も中国の鉄鋼企業にとって重要です。中国政府の補助金により、不当に安い中国製の鉄鋼が市場にあふれているとの批判が以前から物議を醸しており、近年では、中国政府も過剰供給を抑える対策に乗り出しています。しかし、中国が世界の粗鋼生産量に占める割合に大きな変化は見られません。2017年以降、中国のシェアは上昇を続けており、世界の粗鋼生産量の5割を超えています。
中国の国家統計局が7月に発表したデータによると、2023年上半期の中国の粗鋼生産量は5億3,560万トンに達し、前年同期比で1.3パーセント増加しています。足元では、中国国内の不動産市況の悪化に伴い建築用鋼材に対する需要が減少しており、鋼材需要の低迷につながったとみられています。
中国の鉄鋼消費
中国の鉄鋼消費量を評価するのは困難です。鉄鋼の輸出入に加え、機械や自動車、白物家電など、鉄鋼が使用される製品を介した間接的貿易も考慮しなければならないためです。見かけ鉄鋼消費量(ASU、Apparent steel use)は、世界鉄鋼協会(World Steel Association)が開発した鉄鋼需要の測定を目的とする指標で、最終鋼材の生産量(Deliveries)から純輸出量を引いた数値です。2020年の中国のASUは、約9億9,500万トンにのぼりました。また実際の鉄鋼消費量(TSU、True steel use)は、見かけ鉄鋼消費量に鉄鋼の純間接貿易量を含めて算出することで求められます。中国のTSUは2019年時点で約8億2,551万トンにのぼりました。
中国と鉄鉱石
中国の鉄鋼業界は、売上げの面で世界市場での取引に依存しているうえに、原材料(特に鉄鉱石)を輸入に頼っています。中国は、大量の鉄鉱石を自国で産出しており、世界4位の鉄鉱石埋蔵量を誇る国です。しかし、中国で産出される鉄鉱石は、低品質で鉄含有量が比較的少ないのが特徴とされます。そのため、中国は世界各国から輸出される鉄鉱石に強く依存しており、世界最大の鉄鉱石輸入国となっています。中国向け鉄鉱石の主な供給国はオーストラリアとブラジルで、合計すると中国の鉄鉱石輸入量の約80パーセントにおよびます。
また近年、くず鉄のリサイクル率向上を政府が推進する中国では、資源の循環利用が鉄鋼生産でより大きな役割を果たしています。くず鉄のリサイクル率は、他国と比べると依然として低いものの、2021年には22パーセント近くに達しており、年々増加していくことが予想されます。
中国の鉄鋼企業
鉄鋼の過剰供給が中国国内・国外を問わず顕在化するなかで、同国の鉄鋼産業は業界再編の真っ只中にあります。2016年の宝鋼集団(Baosteel Group)と武漢鋼鉄集団(Wuhan Iron and Steel Group)の中国宝武鋼鉄集団(China Baowu Steel Group)への合併は、中国の鉄鋼業界で進む統合再編の典型的な事例のひとつです。宝武鉄鋼集団は2019年5月、馬鞍山鋼鉄(Maanshan Iron and Steel)の上場親会社と経営統合したことで年間生産量が1億トンを超え、鉄鋼業界最大手の座へと一歩近づいています。
宝武鉄鋼集団の粗鋼生産量は、世界有数の鉄鋼メーカーであるアルセロール・ミタル(Arcelor Mittal)を抜いて世界第1位となっています。中国の鉄鋼企業の多くは、宝武集団のような国有企業のため、上場されるのは株式の一部のみです。とはいえ、中国にも民間の鉄鋼企業は存在し、江蘇州に本社を置く江蘇沙鋼集団(Jiangsu Shagang Group)が民間最大の鉄鋼メーカーとなっています。
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