製造・輸送

ロジスティクス業におけるAI導入のメリットとリスク

2024年8月29日 | 発行元 Statista Japan
gorodenkoff via Getty Images
  • AI(人工知能)搭載のカーゴドローン(重量物運搬ドローン)の世界市場規模は、2030年には178億8千万米ドルに達すると推定されています。 
  • 韓国のIT大手サムスンSDS(Samsung SDS)は、グローバルサプライチェーンにおける地政学リスクを予測し、混乱を未然に防ぐために、AIを活用しています。 

ロジスティクス業界では、これまで物流プロセスの簡素化と高速化に向けたさまざまな取り組みが行われてきました。そのため、AI(人工知能)を用いた物流の効率化は、ある程度想定内の進歩といえます。配送業での実用化が期待される人工知能搭載のカーゴドローン(重量物運搬ドローン)の世界市場規模は、2030年には178億8千万米ドルに達すると推定されています。ほとんどの予測調査では、仮にAIの導入に反対の声が上がったとしても、人工知能は社会にとって重要かつ影響力のある存在であり続けるという結論が出ています。 

グローバルサプライチェーンでは、ロシアのウクライナ侵攻やイエメン・フーシ派による紅海での船舶攻撃などにより、地政学リスクが高まりつつあります。韓国のIT大手サムスンSDS(Samsung SDS)は、リスクを予測し、物流の混乱を未然に防ぐために、AIを活用しています。同社では、生成AIが大量のニュースと過去の事例を照合分析し、危険度と影響を自動算出して担当者に知らせます。2024年4月に発生したイスラエルとイランの軍事衝突では、このシステムが効果を発揮。AIが直ちにリスクを感知し、貨物への影響を荷主に知らせた後、代替ルートを提案することで、運送の中断を回避しました。 

AI導入のメリット 

デンマークの海運大手マースク(Maersk)のデータによると、デジタルツイン技術などのAIソリューションは、ロジスティクス業界の業績改善に貢献しています。デジタルツイン技術とは、トラックや倉庫といった現実世界の資産を仮想空間で再現する技術です。物流業者は、こうしたAI技術の活用によって、サプライチェーン内で発生する問題をリアルタイムで把握し、対応を迅速化できます。アマゾン(Amazon)やフェデックス(FedEx)などの3PL(サード パーティ ロジスティクス)企業は、主に物流倉庫や運搬の自動化にAIを利用しており、需要予測、在庫管理、ルート最適化、ロボット・フォークリフトの操作にも用いられています。人工知能の使い道はさまざまですが、AIの学習速度が向上するにつれて、さらに用途の幅が広がっていくとみられています。 

AI搭載ドローンの事例 

高度な情報処理能力を持つAI搭載ドローンは、アフリカなどで遠隔地に医薬品を配送し、多くの命を救っています。米シリコンバレー発のスタートアップ、ジップライン(Zipline)は、2016年に東アフリカのルワンダで世界初の輸血用血液空輸システムを立ち上げました。同社は、従来の輸送方式では配達が困難だった地域の病院に、自律飛行するドローンで血液や血液製剤を届けています。 

AI導入のリスク 

ロジスティクス業界でのAI活用には、利点だけでなくリスクも伴います。米連邦捜査局(FBI)のインターネット犯罪苦情センター(IC3)などは、サイバー犯罪が増加していると警告しています。2023年、FBIに報告されたフィッシング詐欺の被害件数は、米国だけで約30万件にのぼりました。個人情報盗用などのその他の犯罪も、消費者にとって大きなリスク要因です。チャットGPT(Chat GPT)やワームGPT(Worm GPT)などの生成AIを悪用し、顧客情報を不正に入手する犯罪者も現れており、3PLや郵便・宅配便の安全が脅威に晒されています。また、AI搭載ドローンは、撮影した画像・動画をワイヤレスでほかの電子端末に配信できることから、普及拡大を危惧する声が世界中で上がっています。 

今後は、個人・企業ともにAI犯罪の被害に遭うリスクが高まるため、ロジスティクス業界への影響波及は避けられないとみられます。リスクの増大に対し、米国やその他の国の企業は、全体的なアプローチで対応しています。ロジスティクス業におけるAIの導入には、サイバー空間の脅威からAIシステムを保護する、またはAIの動作を常時監視するなどの戦略が効果的と考えられています。 

AIチャットボットの事例 

米国では、カスタマーサポート業務でAIの導入が進んでいますが、同国の消費者を対象に実施された2022年の調査では、回答者の43パーセントがチャットボットによるカスタマーサポートに「(全く)満足していない」と答えています。他方、AIのサービスに「(とても)満足している」との回答は、25パーセントに留まりました。AIは人間に近い対話が可能ですが、顧客の要望に対応する能力は依然として限られています。 

AIと未来のロジスティクス 

物流工程の自動化を求める声は人工知能導入の推進力となっており、倉庫管理から製品配送に至るまで、すでにロジスティクスの幅広い分野でAIが実用化されています。物流・ロジスティクス業界が抱える課題をAIがすべて解決できる訳ではありません。しかし業界では、良くも悪くも人工知能が定着しつつあるといえます。 


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