近年、日本は自殺者数が減少傾向にありましたが、それでもなお、38の先進国が加盟するOECD(経済協力開発機構)で自殺率が最も高い国の一つとなっています。歴史的にみて、世界平均を超える日本の自殺率の高さは、その経済状況と密接に関係しています。日本人が自殺を決意する主な理由は健康問題ですが、経済・生活問題や勤務問題も自死の大きな要因となっています。たとえば、日本が戦後最悪の不況に見舞われた2009年には、自殺者数がピークに達しています。直近では、新型コロナウイルスの感染拡大と、それに伴う経済への深刻な影響により女性の自殺者が増加したことで、自殺率が再び上昇しました。
日本の隣国である韓国は OECD加盟国で自殺率が最も高い国となっていますが、韓国の統計庁が2023年2月に発表した報告書によると、2021年の韓国での10代の若者の自殺死亡率は人口10万人当たり7.1人となっており、2019年の5.9人に比べて20.3パーセント上昇したことがわかりました。韓国の青少年においては、学業のストレスや家庭問題、さらにコロナ禍による社会的孤立感などが自殺の主な原因であると考えられています。
勤務問題が原因の自殺
職を維持することへのプレッシャーから長時間残業を強いられ、体調不良でも仕事が休めず、有給休暇が取得しづらいといった職場環境は、会社員による自殺の主な原因であるとみられています。いわゆる「ブラック企業」は、劣悪な労働環境で知られていますが、長時間の残業を強いられるだけでなく、上司や先輩によるいじめや差別、精神的虐待も日常茶飯であると考えられています。
一方で、バブル期の1980年代頃からは、ブラック企業と呼ばれる会社以外でも職場での突然死=過労死が頻発するようになりました。長時間にわたる疲労の蓄積などによって死に至る「過労死」は、今では日本で広く知られた現象となっています。こうした突然死は、肉体的な疲労のみならず、プレッシャーの高い職場環境にも起因するとされます。なお、職業的ストレスや過労が原因の自殺は、過労自殺と呼ばれます。
また近年、日本の若い世代を中心に一部で話題となっている言葉に「ゆるブラック企業」があります。ゆるブラック企業とは、「過度な残業労働は無い代わりに成長の機会も乏しく、将来性が感じられない」職場のことであるとされ、仕事は大変ではなく居心地はよいものの、スキルアップが望めない職場環境を表す言葉であるといわれています。若者がもつ働き方に対する価値観が変わってきている昨今、労働環境の改善のみならず、「働きがい」を感じさせる職場を作る取り組みも、企業の健康経営への課題となっていく可能性があります。
日本の労働文化に関する海外メディアの報道では、事務系の職種に就く労働者の自殺が繰り返し取り上げられる傾向にありますが、日本の自殺者の多くは無職であったことがわかっています。正社員として働いて社会に貢献することが良きとされる文化において、職を失うことは、劣悪な労働環境を耐え忍ぶのと同じ様に、個人の健康に対して深刻な影響を及ぼす可能性があるとみられています。
子どもの自殺
日本では、自殺のリスクが高いのは中高年の男性であるというイメージが定着していますが、最近では高齢者や児童の自殺が繰り返し報道されています。経済的な不安やいじめ、孤独感、未整備な精神医療体制など理由はさまざまですが、すべての年齢層において自殺率が比較的高い点が指摘されています。
日本の小中高生の自殺者数は、コロナ禍で過去最多を記録しました。高校生の割合が高かったのが特徴的ですが、小学生の自殺者数も増加しました。若者を自殺に追い込む原因についてはまだ詳しく解明されていませんが、最新のデータでは、家庭問題やいじめといった対人関係に関する悩みや、学校の成績を維持するためのプレッシャーなどが、自殺者数の増加の主な原因になっていると考えられています。
2023年5月、小倉将信こども政策担当大臣は、子どもの自殺防止のために2019年10月から医療機関やNPOなどの専門家で構成する「子どもの自殺危機対応チーム」を設けている長野県を視察しました。2022年に小中高生の自殺者数が過去最多となったことを踏まえ、自殺の危険がある児童・生徒をいち早く察知して、医療機関につなげる取り組みなどについて関係者の話を聞いたとみられています。さらに、小倉大臣は記者団に対し、全国自治体への子どもの自殺防止対策チームを設置するよう呼びかけを行う方針を明らかにしました。
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