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プラントベースフードの国内市場 普及の一方で見えてきた課題

2024年4月12日 | 発行元 Statista Japan
テーブルの上に並べられたヴィーガン食品やプラントベースフードの数々。
Aamulya via Getty Images
  • 日本は、代替肉の主なターゲット顧客であるヴィーガン(完全菜食主義者)の割合が少なく、プラントベースフード普及の足かせとなっています。 
  • マヨネーズで知られるキューピーは、近年プラントベースフードの開発に力を入れています。日本よりもプラントベースフードの浸透率が高い欧米や、宗教上の理由から菜食主義者の多いインドおよびアジア諸国に商品の展開を検討しているとみられています。 

プラントベースフード(代替肉)とは、動物性食品を使わずに、野菜やキノコ、海藻類など、植物由来の素材のみで作られた加工食品のことを指します。プラントベースフードの世界市場規模は、サステナブル(持続可能)なライフスタイルや動物福祉、深刻化する環境問題に対する消費者意識の高まりを受けて、ここ数年で急速に拡大しましたが、日本で注目されるようになったのは、ごく最近のことです。栄養バランスのとれた菜食は、精進料理に代表される日本の伝統的な食文化の一部です。しかし、コロナ禍で自炊する人が増え、健康的な食事や新しい食材を使った調理方法が広く報じられるようになると、代替肉としての側面に焦点を当てたマーケティングが国内でも強化されるようになりました。 

プラントベースフード業界の利害関係者

プラントベースフードを推進しているのは、政府機関や動物愛護団体、業界団体、メディアなどのステークホルダー(利害関係者)です。代替肉の普及が推進される理由としては、日本の食料自給率が低下しており、持続可能な食料生産方法の開発が喫緊の課題であることや、競合に先んじて市場シェアを確保する必要があることなどが挙げられます。 

植物性タンパク質を豆腐やがんもどきのような食品に加工する技術は、日本の食品製造業においてすでに確立されています。しかし、人びとが慣れ親しんだ肉の味や食感を再現するには、新技術の開発や研究が欠かせません。特許取得では海外企業が先行していますが、国内ブランドには消費者から信頼を得ているという利点があります。競争の中心ともいえる日本のスタートアップエコシステムは、総合商社や食肉業界大手などの投資家を引き寄せています。外食産業も、主要なプラントベース食品メーカーと連携して代替肉ハンバーガーや大豆ミートのナゲットを開発・販売し、トレンドの波に乗って利益を上げています。 

既存の大手食品メーカーでは、マヨネーズやドレッシングの製造・販売で知られるキューピーが、プラントベースフードの開発に力を入れています。2023年3月には、植物由来の素材で作られた商品を展開する新ブランド「グリーン・キューピー(GREEN KEWPIE)」を立ち上げ、2024年3月時点では、合計9品を販売しています。日本よりもプラントベースフードが浸透する欧米や、宗教上の理由から菜食主義者の多いインドなど、今後は海外への商品展開も検討していくと報じられています。 

このインフォグラフィックは、欧州各国におけるフレキシタリアン(基本は植物性食品を中心に食べるが、時には肉・魚も食べるという柔軟なベジタリアンスタイルを取る人)の割合を示したものです。
出典元:statista.com

持続可能性に関する課題

大豆加工品は、近年世界中で注目を集めています。しかし日本では、こうした植物由来の食品が、海外のようにライフスタイルとしてではなく、一般的な食の選択肢のひとつとして捉えられています。日本は、代替肉の主なターゲット顧客であるヴィーガン(完全菜食主義者)の割合が少なく、プラントベースフードの普及の足かせとなっています。代替肉が食卓に登場するのは稀で、持続可能性を意識してというよりも、健康志向を理由に購入する人が多いのが現状です。 

また、透明性についても課題が残ります。植物由来の代替肉は、食品衛生法の対象です。しかし、「植物性」と表示されている場合でも、それが必ずしも動物性原材料を使用していない製品とは限りません。肉、ラード、卵の味・食感を再現する研究は進んでいますが、コストを抑えるために肉エキスなどの動物性添加物が風味付けに使われている場合があります。大豆を中心に原材料価格の高騰が叫ばれるなか、日本のプラントベースフード業界は、商品の価格を抑えつつも、持続可能な生産を実現するプレッシャーに直面しています。 


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