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日本の有機農業が抱える課題

2023年08月15日 | 発行元 Statista Japan
日本で有機農業を営む男性。
okugawa via Getty Images
  • 2023年2月、沖縄県南城市・奧武島産のモズクが国内で初めて有機JAS認証を取得し、注目されています。種付けから、栽培、加工に至るまで成長ホルモン剤などを使用しないのが特徴で、生産者は「県外や海外にもアピールしていきたい」と述べています。 
  • 2023年6月、化学肥料や農薬、除草剤を使わない有機農業を学べる全国的にも希少な農業学校「綾オーガニックスクール」が宮崎県に開校しました。同校では有機農業や農業技術はもちろん、農業専門の行政職員によるアカデミックな指導が受けられるほか、農作物の販売につながるブランディング戦略やマーケティング手法なども学べるといいます。 
  • 2022年時点では、日本国内のJAS有機認証を取得していた農地の面積は合計で約1万5,300ヘクタールで、過去最高を記録しました。過去10年間にわたり、JAS有機認証を受けた農地の面積は年々拡大しています。 

自然環境に対する意識の高まりは農業にも影響を及ぼしており、環境にやさしい有機農業(オーガニックファーミング)が世界的に広がりつつあります。日本では、有機認証を取得した農産物の生産量が大幅に増加しており、持続可能(サステナブル)な農業に対する意識が高まっていることがみてとれます。日本で行われた調査によると、農産物を購入する際、栽培に化学肥料が使われたかどうかに注意を払うと答えた人や、化学肥料が健康や環境に与える悪影響について関心があると回答した人が多いことがわかっています。 

農林水産省では、2000年に施行された改正JAS法(農林物資の規格化等に関する法律)に基づき、農地や有機農産物、有機植物由来の加工食品の認証を行っています。2020年からは、農林水産省が定める持続可能な農林物資の生産、加工、ラベル表示、販売のガイドラインに準拠した有機畜産物および動物由来の加工食品も、有機JASマークで認証されるようになりました。有機JAS認証とは、気候・環境保護、生物多様性の保全、土壌肥沃度の保全、化学・合成品の未使用、消費者に対する明瞭なラベル表示を保証するものです。 

2023年2月、沖縄県南城市・奧武島産のモズクが国内で初めて有機JAS認証を取得し、注目されています。種付けから、栽培、加工に至るまで成長ホルモン剤などを使用しないのが特徴で、「全国に流通するモズクの0.1パーセントといわれる貴重なモズク」とされ、生産者は「県外や海外にもアピールしていきたい」と語っています。 

日本におけるサステナブルな農業とその課題

有機農産物の生産量増加とともに、有機農業の農地面積も増えています。2022年時点では、JAS有機認証を取得していた国内の農地面積は合計約1万5,300ヘクタールで過去最高でした。過去10年間にわたり、JAS有機認証を受けた農地の面積は年々拡大しています。 

日本で最も生産量が多かった有機農産物は、米と野菜でした。生産量が最も多かった有機畜産物は牛乳で、その次が卵となっています。 

有機農業が日本の農業全体に占める割合は依然として小さく、高温多湿の夏が持続可能な農業の妨げになっているとされます。梅雨期には、大雨や洪水によって土壌が流出して作物の根の発達が遅れ、梅雨明けの猛暑によって雑草や害虫が大量に発生します。通常であれば対策として化学肥料が使用されますが、土壌が傷むうえに、有機農業では使用が禁じられているため対応が困難なのです。 

2023年6月、全国的にも希少な、化学肥料や農薬、除草剤を使わない有機農業を学べる農業学校「綾オーガニックスクール」が宮崎県綾町に開校しました。同校では、有機農業の知識や農業技術を習得できるのはもちろん、農業専門の行政職員によるアカデミックな指導が受けられ、農作物の販売につながるブランディング戦略やマーケティング手法なども学べるとされます。2年間の現場実践で有機農業を体系的に学べるほか、綾町で就農した先輩農家との交流などもプログラムの一部です。 

低い有機農産物シェア

改正JAS法が導入されてからすでに20年以上が経過していますが、国内の野菜総生産量のうち有機野菜が占める割合は依然として低く、1パーセント以下となっています。海外から輸入した有機農産物は、有機JASの認定を受けることで国内に流通させることが可能です。いずれにせよ、有機農産物は割高なうえに供給が不安定で、国内の需要も低いため、日本の食品卸売業者の頭を悩ませています。 


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