ソーシャルメディア(SNSなど)の役割は、日本ではすでに交流サービスの枠組みを超えています。元々は、メッセージングアプリのライン(LINE)のように家族や友人とのコミュニケーション手段として使われてきましたが、最近では情報収集の場としても重宝されています。ユーチューブ(YouTube)やインスタグラム(Instagram)などのプラットフォームには、コメント機能や共有機能が備わっており、ニュース、娯楽、商品レビューなど、今話題のトピックが検索可能です。2022年度に行われた調査によると、日本の約5人に1人がソーシャルメディアをショッピングの情報源としていました。
テレビや新聞のような従来のマスメディアでは、情報を発信する送り手(メディア)と、情報の受け取り手(消費者)に分かれた一方通行型の情報発信が行われてきました。しかしSNSは、消費者が製品やサービスを購入・利用した体験を口コミとしてほかのユーザーや事業者と共有できる対話型の空間となっています。
購買チャネルとしてのソーシャルメディア
ソーシャルメディアを活用して商品やサービスを販売する「ソーシャルコマース」は、日本ではまだ黎明期にあります。主な理由は、オンプラットフォーム(ソーシャルメディア上)で買い物を完結できる、ネイティブチェックアウト(アプリ内決済)機能の導入が進んでいないためです。事業者はその代わりに、ユーザーを公式オンラインショップへと誘導せずに決済を完結できる「リンク決済」のようなサードパーティのサービスに頼らざるを得ません。そのため、ユーザーがソーシャルメディア・プラットフォームを一度離れてから購入を完結するオフプラットフォームでの販売が、業者にとってより現実的な選択肢となっています。
口コミが消費者の購買行動に与える影響は大きくなっているものの、ソーシャルメディアの購買チャネルとしてのイメージは、まだ日本では定着していないようです。特に高齢のユーザーは、ソーシャルコマースの利用をためらう傾向にあります。eコマース(EC)市場と同様に、ソーシャルメディアでの購入を後押ししているのはテクノロジーに精通した若い世代であることから、若年層をターゲットにした新たな機会が生まれています。
一方で、ソーシャルコマースの新しい形として注目を集めているのが「ライブコマース」です。ライブコマースは、動画のライブ配信とECを組み合わせた新たな販売形態で、インフルエンサーなどがリアルタイムで商品をユーザーに紹介し、購入へとつなげます。2023年6月、ソーシャルコマースを専門に手がけるクアント(QUANT、本社:東京都新宿区)は、成果報酬型ライブコマースの新サービスの提供を開始しました。新サービスでは、企画設定からインフルエンサーのアサイン、ライブ配信の構成から配信までをフルサポートを行います。またクアントは、ライブ配信後に分析を行ってリピート購買やロイヤルカスタマーを特定するなど、データ主導のソーシャルコマース支援に取り組んでいます。
ソーシャルコマースのこれから
日本では、デジタルに精通した世代の人口増加とともに、ソーシャルメディアの利用者数が成長すると見込まれています。企業はソーシャルメディアが人びとの生活に欠かせない存在となっていることを認識しており、ソーシャルメディア広告への投資を拡大しています。
モバイル技術はソーシャルコマースの成長のカギです。消費者は多くの時間をスマートフォンやタブレットで費やしており、これらの端末を使ったネットショッピングはデスクトップパソコンを上回っています。2022年度にネットで販売された物理的な商品の50パーセント以上は、モバイルコマース(Mコマース)によるものでした。
巨大ソーシャルメディア企業は、ユーザーインターフェース(UI)を最適化してプラットフォーム機能を拡大すべく、しのぎを削っています。今後は、オンプラットフォームで購入を完結できるネイティブチェックアウト機能の導入が進む見通しです。
本記事は、日本のソーシャルコマース市場に関するStatistaのSpotlight Reportからの抜粋を基に作成しています。より詳しく知りたい方は、こちらからレポート(英語版のみ)をダウンロードしてください。
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