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動画配信サービスの台頭が日本のアニメ産業にもたらす影響

2024年4月24日 | 発行元 Statista Japan
海岸の岩の上で、太陽が燦燦と光る青空を仰ぐアニメ風の女性
Grandfailure via Getty Images
  • 日本における定額制動画配信(SVOD)サービスの利用率は、2015年の9パーセント未満から2023年には39パーセントにまで増加しており、動画配信(VOD)サービスとしては近年最大の成長率を誇ります。 
  • 日本のSVODサービス利用者の約半数が視聴するアニメは、SVODプラットフォームで最も人気のコンテンツとなっています。 

2022年、日本のアニメ産業の市場規模は2兆9,300億円に達し、2年連続で過去最高を更新しました。アニメ産業の成長の追い風となっている要素のひとつが、海外、国内ともに利用者が増えている動画配信(VOD)サービスです。VODプラットフォームが台頭してきたことで、コンテンツへの需要が急増し、アニメ制作業界には新しい挑戦の機会がもたらされています。

ネットフリックス(Netflix)とアマゾンプライムビデオ(Amazon Prime Video)が国内向けサービスの提供を開始した2015年は、日本のVODサービス市場の転換点とみなされています。2015年以降、VODプラットフォーム間の競争は激化し、国内市場が大きく成長しました。2010年代後半には、その他のVODサービスも次々と市場に参入したため、激しい視聴者獲得競争が展開されています。国内のサービスとしては、アニメ放題、ティーバー(TVer)、アベマ(Abema)、パラビ(Paravi)が挙げられます。海外発のサービスには、ダゾーン(DAZN)、ディズニープラス(Disney+)、アップル TVプラス(AppleTV+)があります。 

VODサービスの国内市場

VODサービスの国内市場規模は、2022年に史上最高となる4,530億円に達したと推定されています。ネットフリックスとアマゾンが日本市場に参入した2015年と比べると、市場規模は3倍以上に拡大しています。なお、日本におけるSVODサービスの利用率は、2015年の9パーセント未満から2023年には39パーセントにまで増加しており、VODサービスとしては近年最大の成長率を誇ります。 

最もよく視聴されるメディア

テレビは、依然として日本で最もよく視聴されているメディアです。2022年5月に行われた調査では、テレビ番組をよくリアルタイム視聴すると答えた人の割合が全体の3分の2にのぼり、半数以上が録画したテレビ番組を視聴すると答えています。SVODサービスの利用者数は、近年大幅に増えたものの、有料のVODサービスをよく視聴すると答えた人の割合は、全体の3分の1以下にとどまります。これらの数値からは、テレビ視聴が国民の日常習慣として定着しており、人びとの暮らしに欠かせない存在であることがうかがえます。

テレビを超えたアニメ配信市場

2022年のアニメ配信市場規模は、2019年の2倍以上となる1,652億円に達しました。アニメ配信の売上は、コロナ禍に伴う「巣ごもり特需」で大きく伸び、2020年に初めてテレビアニメ放送市場を上回りました。 

売上では追い抜かれたとはいえ、視聴者が多いテレビは、放送局がアニメ制作に直接関わることが一般的であるという事情もあり、今なおアニメ産業の中心的存在です。一方、VODサービスでは、プラットフォームごとに視聴者の棲み分けが進んでおり、関連グッズを含む作品の二次利用に関する制作会社側のノウハウも足りていません。そのため、ネットフリックスなどのVODプラットフォームは、オリジナルのヒット作を高予算で制作するのが困難になっています。近年最も注目を集めた『鬼滅の刃』、『呪術廻戦』、『SPYxFAMILY』は、すべてテレビアニメです。 

動画配信サービスが生み出す新たな可能性

日本のSVODサービス利用者の約半数が視聴するアニメは、SVODプラットフォームで最も人気のコンテンツとなっています。そのため、VODサービスへの移行はアニメという媒体の人気をさらに加速させると考えられています。オススメ機能が備わっているVODプラットフォームでは、多数のコンテンツの中から観たい作品を直感的に選べるため、ユーザーが趣味・嗜好に合った作品を見つけやすくなっています。また、ほかの媒体では発信されていない作品や知名度の低い作品でも、視聴者の目に留まりやすい仕組みになっています。今後は、VODサービスの普及により斬新なアイデアが生まれ、アニメ作品のテーマが多様化することに期待が寄せられています。

また、ライト層のアニメ好きが支持する作品は、コア層に人気の作品と比べて関連グッズなどの売上が少ないことから、商業化が難しいのが現状です。比較的認知度の高い漫画が原作のアニメにもかかわらず、DVDやブルーレイなどの物理メディアの売上が伸びない作品は意外にも多いとみられています。VODサービスは、こうした大衆向けの作品との相性が完璧なプラットフォームといえるでしょう。 

本記事は、「動画配信サービスの台頭が日本のアニメ産業にもたらす影響」をまとめたStatistaのOverview Reportからの抜粋を基に作成しています。より詳しく知りたい方は、こちらからレポート(英語版のみ)をダウンロードしてください。    


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