ストリーミング配信サービスの登場により、世界のメディアおよびエンターテインメント業界は変貌し続けています。インターネット普及率の急速な上昇とデジタルコンテンツへの需要の高まりに後押しされ、かつてないほど多くの人がオンラインストリーミング配信サービスを利用しています。従来のメディア形式と比較して、ストリーミング配信技術がもたらす主な恩恵は、自由度の高さです。視聴者は、いつ、どこで、どのデバイスで映画を観たり、好きな音楽を聴いたりするかを自分で決めることが可能になりました。さらに、オフライン型のサービスと比べ、ストリーミング配信サービスのプラットフォームはより豊富なコンテンツを提供しています。インフラ面で制約のある地域では、手頃な価格で利用できるこのようなサービスは利便性が高く、ストリーミング媒体に対する消費者の利用額が年々増加していることは自然な潮流であると見られています。
世界中で注目されている音楽のストリーミング
現在、オンラインで音楽を楽しむことは当たり前となっています。スマートフォンとストリーミング配信サービスの普及により、音楽ファンはCDを購入せずとも最新のヒット曲を常に入手できるようになりました。最近のデータでは、音楽のストリーミング配信サービスの加入者数は5億人を突破しており、収益も過去10年間で6億米ドルから170億米ドル近くまで急増するなど、音楽業界にとってCDやデジタルダウンロードを超えた、最大の収入源となっています。ユーザー数を見ると、2022年時点で最大の音楽ストリーミング配信サービスはSpotifyで、Apple Music(アップル・ミュージック)が2位となっています。両社は世界的に人気を博しているポッドキャストを数多く配信しています。最新のレポートによると、ポッドキャストを聴く人の数は、2021年の3億8,400万人から、2024年には5億人を超えると予想されています。
台頭する動画ストリーミング配信
一昔前までは、新聞のテレビ欄や映画館の上映スケジュールを見て、その時間に合わせてテレビを点けたり、映画館を訪れたりすることが当たり前でした。しかし今ではいつでも、どこでも、どんな映画や作品も見ることが可能となっています。
今後数年間で、インターネットを介して視聴者にコンテンツを届けるOTTサービス全ての利用者数と収益の増加が予測されていますが、その中でもサブスクリプション ビデオ オン デマンド(定額制動画ストリーミング配信サービス、SVOD)の収益が最も急速に上騰すると見られています。2026年までには、世界人口のほぼ半数が少なくとも1つのOTTビデオサービスを利用するようになると見込まれています。これはテレビ放送や上映スケジュールに縛られないノンリニアな動画ストリーミングサービスの人気が今後も高まると予想されているためです。このトレンドをいち早く取り入れたのはNetflixで、最近では有料会員数が減少傾向にありますが、依然として世界有数のSVODプロバイダーです。他の人気なサービスとしてはAmazon Prime Video(Amazonプライム ビデオ)やDisney+(ディズニープラス)があり、特にDisney+は利用者数が急増しています。
改革を迫られるサービスの課金モデル
破竹の勢いを見せているストリーミング配信サービスですが、ユーザーが求めるコンテンツの多様性や品質を維持するために、収益の向上が求められています。Spotifyはこれまでサブスクリプション型の課金モデルに頼ってきましたが、収入源を増やすために広告事業に力を入れ始めており、将来的には総売上高に広告収益が占める割合を現在の約1割から2〜3割に引き上げることを目標にしています。
また、Netflixも新規加入者の頭打ちを受け、2022年11月から日本やドイツなど12ヵ国で広告付きのプランを開始しました。しかし日本では、NHKが「インターネット活用業務実施基準」に抵触する恐れがあるとして同局の番組のストリーミング配信停止を申し入れるなど、物議を醸しています。一方、音楽業界ではストリーミング配信サービスの人気上昇とともに楽曲の価値が大きく上昇しており、ジャスティン・ビーバー、ボブ・ディラン、スティングなどの有名人気歌手が自身の楽曲の権利を売却するケースが増加しています。
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