デジタルヘルスは、全世界で最新医療システムの基盤となっており、モバイルヘルス(mヘルス)、テレヘルス(遠隔医療)、ヘルスインフォマティクス(健康情報学)、そしてeヘルス(情報通信技術医療)といった関連用語がしばしば同義語として用いられます。デジタルヘルスは、最新の情報通信技術を使ってより迅速かつ効率的な医療を実現することにより、コストの削減に貢献しています。
米国では、医療の効率化を目標として2010年に米国で実施された医療改革(通称アフォーダブルケア法またはオバマケア)が、デジタルヘルスソリューションの普及につながったと広く考えられています。
2023年6月には、日本国内でmヘルスサービスを展開するCureAppが、スマートフォンアプリのLINEを介して高血圧に悩む人を支援するサービス「ascure 重症化予防(血圧コース)」をリリースしました。サービス内容には、医療の専門家によるオンライン面談や、生活習慣の改善を促す動画コンテンツの配信、血圧の自動記録機能が含まれており、ユーザーによる高血圧に関する正しい知識の獲得を目指しています。
成長とイノベーション
ある推計では、世界のデジタルヘルス市場規模が2023年に4,170億米ドルに達し、2025年には6,500億米ドルを超えるとみられています。特にmヘルスや遠隔医療は、市場の成長を牽引する分野の一つであるとされます。
デジタルヘルスは、主に新興企業による新規投資の受け皿にもなっており、同分野への投資額は、2010年の11億米ドルから10年間で220億米ドル近くにまで急増しています。米国は、デジタルヘルス産業において牽引的存在であり、ロサンゼルスやニューヨーク、サンフランシスコ(ベイエリア)といった大都市圏は、デジタルヘルス分野の中心地となっています。
サンフランシスコ発の企業向けVRアプリ開発会社であるPotlatch(ポットラッチ)は、2023年1月、仮想現実(Virtual Reality、VR)を使って比較的低コストで医療手術の訓練が行えるVR医療トレーニング事業を開始しました。通常、手術の訓練には特殊な医療機器や、患者を模した専用のマネキンなどが必要であることから、高額な費用が発生します。そのため、費用を抑えて手術の訓練が行える新しいVRシステムに注目が集まっています。
普及率が高いeヘルス
eヘルスソリューションの広がりは、医師の電子カルテや電子医療記録・電子健康記録(EMR/EHR)システムの利用率に表れています。2001年時点では、EMRやEHRシステムを利用する米国の個人開業医の割合は約18パーセントでしたが、2021年には88パーセントに達しています。EHRの世界市場規模は、2020年の290億米ドルから拡大し、2027年には472億米ドルに達すると見込まれています。
日本政府は2023年6月、医療分野におけるデジタル化を推進するための工程表「医療DX」を発表しました。2024年度には患者の保険・医療・介護などの情報を共有する「医療情報プラットフォーム」の運用開始が計画されるなど、政府主導の取り組みが加速しています。さらに、遅くとも2030年までには概ねすべての医療機関で電子カルテの導入を目指しているとし、医療機関の事務作業の効率化やコスト削減に期待が寄せられています。
パンデミックによる市場拡大
テレヘルスや遠隔医療も近い将来に重要性が高まる分野であると予測されており、遠隔医療の世界市場規模は、2019年の約500億米ドルから、2025年には約2,800億米ドルに成長すると考えられています。米国における遠隔医療サービスの普及率は、過去5年間にわたって安定した増加傾向にあります。
一方で、医師がビデオ通話で患者を診察するオンライン診療は、新型コロナウイルス感染症の流行によって普及が大幅に拡大しました。感染拡大を防ぐためのソーシャルディスタンスや、ほかの患者との接触を避ける必要性が生まれたことから、救急や急病の場合でない大半の診療において、非常に有効な診療方法となっています。
デジタルヘルスの成功に欠かせない条件
インターネット使用率の急速な拡大や、インターネットの高速化、モバイル端末やネットワーク、ソーシャルネットワーク(SNS)の普及は、デジタルヘルスの台頭に欠かせない条件です。また、データ転送や情報交換がリアルタイムに行われることは、医師と患者の双方に利益をもたらすと考えられています。しかし、サイバーセキュリティへの懸念から、健康に関するデータの交換に同意しない患者も少なくありません。一方で、患者はインターネット上に無数に存在する健康に関する情報にアクセスすることができるなど、利便性が向上しているのは事実です。
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