電子廃棄物(電子ごみ)とは、バッテリーや電気・電子回路を搭載している電気製品や電子機器が廃棄物となったときの総称です。主に照明器具(蛍光灯、HIDランプ、LEDランプなど)、小型のIT・電子通信機器(携帯電話、PC、プリンターなど)、ディスプレイ・モニター(テレビ、ノートブックパソコン、タブレット端末など)、熱交換器(エアコン、冷蔵庫、ヒートポンプなど)、大型家電(洗濯機、乾燥機、食洗器など)、小型家電(掃除機、電子レンジ、ビデオカメラなど)の6つのカテゴリーに分類されます。重量でみると、電子ごみのなかでは小型家電が最大シェアを占めています。毎年、世界全体で約5千万トンを超える使用済み電気製品が廃棄されているとみられ、これは世界の1人当たり平均7キログラムの電子ごみが出されていることになります。
増え続ける電子ごみ
急速な技術革新や電子機器の需要増加、製品ライフサイクル(製品寿命)の短縮化によって、電子ごみは急激に排出量が増加しています。電子ごみの排出量は、2010年から2019年にかけて約60パーセント増加したとみられており、2030年までには世界全体で約7,500万トンに膨れあがると予測されています。世界の電子ごみのほぼ半数を占める地域はアジアで、その大半が世界最大の電子廃棄物排出国である中国で発生しています。アジアで発生する電子ごみの総量は、他地域を遥かに上回っていますが、1人当たりの電子ごみ排出量は欧州の3分の1程度です。
電子ごみの管理方法
世界で排出される電子ごみには、約600億米ドル相当の貴金属(金、銀、パラジウム、銅など)が含まれていると見積もられています。しかし、毎年回収され、適切に再利用されている電子廃棄物は、全体のわずか17パーセントに過ぎません。残り83パーセントの電子ごみの行き先は不明であり、回収可能な貴金属が大量に投棄・焼却されている可能性が高いと考えられています。
また近年、電子廃棄物から貴金属やレアアース(希土類)元素などの貴重な原材料を摘出し、再利用する「都市鉱山の採掘」が注目を集めています。電子ごみの採掘は効率が良く、1トンの金鉱石に含まれる金の量が平均して5グラム程度なのに対し、1トンのスマートフォンには約300グラムの金が使われているとされます。ほかの貴金属でも同様の傾向がみられることから、電子廃棄物を効果的に管理することで、収益の獲得はもちろん、廃棄物増加の抑制につながると期待が寄せられています。
裕福な先進国の多くは、アフリカなど適切な廃棄物管理が実施されていない発展途上国・地域に電子ごみを大量に輸出することで処理を行っています。電子機器には水銀、ヒ素、難燃剤などの有害物質が含まれている可能性があり、適切に管理しないと環境中に溶出していまいます。事実、世界最大級の電子廃棄物処理場があるガーナでは、健康・環境問題が深刻化しています。こうした有害廃棄物の発展途上国への輸出阻止を定めた国際条約には、バーゼル条約があります。2022年6月に開催されたバーゼル条約第15回締約国会議(COP15 )では、非有害電子廃棄物を新たに条約の規制対象に追加することが決定しました。有害・非有害にかかわらず、すべての電子廃棄物の国境を超える移動および処分が条約の規制対象となります。
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