DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、変化の激しいデジタル社会において、企業が競争力を保つのに不可欠な投資です。DXとは、企業の生産性、効率性、持続可能性を向上させる目的でデジタル技術を事業に取り入れることを意味します。新型コロナウイルス感染症の世界的流行で注目が高まったこの用語は、変化に俊敏(アジャイル)に対応し、データに基づいて的確(インテリジェント)な意思決定を行う企業文化への移行を象徴するようになりました。AI(人工知能)、ビックデータ、そしてクラウドは、複数の業界を横断して広く実用化が進む主な変革的技術の例です。また製造業などにおいては、専門分野に特化したロボット技術が活用されています。2023年時点では、世界の企業の7割以上がDXを優先順位の高いITプロジェクトと捉えていました。2021年には5割程度だったことから、DX化が多数の企業で着実に進んでいることがわかります。
急上昇するDX支出、1位はクラウド技術
全世界のDX支出は、2022年時点で前年比約15パーセント増の1兆8,500億米ドルに達しました。リモートワークの拡大を機に多くの企業がクラウド技術導入に踏み切るなど、パンデミックがDXを加速させたとみられています。実際に「既存システムのクラウド化」は、2022年に世界で最も多くの企業が実施したDXに向けた取り組みでした。世界のパブリッククラウド市場は2023年、約5,636億米ドルに達したと予測されています。同年、世界の企業の9割近くがクラウド技術を採用したとみられ、新興技術としては最高の導入率となっています。
業界を横断して進むAI導入
AIは、最先端のDXイニシアチブですが、AI技術の導入率は事業部門ごとに大きく異なります。2023年の調査では、AIの導入がサービスオペレーション部門や戦略・コーポレートファイナンス部門で大きく進んでおり、全業界では導入率が20パーセント以上に達したことがわかりました。AIや機械学習を導入すれば、経営陣は予測モデリングで的確な意思決定ができ、パーソナライゼーションやAIチャットボットで顧客サービスを強化できます。しかし、AI導入には複雑かつ高度な技術が必要とされるため、予算が限られる中小企業には大きな課題です。
労働者にもたらされる変化
特殊なスキルや能力が必要とされる最新のIT技術が普及したことで、労働者の役割を再評価する動きが広がっています。事業変革には多くの場合、DX人材の採用が不可欠ですが、研修・育成プログラムによる既存社員のリスキリングやスキルアップを行う企業も増えています。2022年の調査では、データアナリティクスの従業員向け研修プログラムを導入すると答えたグローバル企業の割合は25パーセントにおよび、前年から7パーセント上昇しています。デジタル活用力(デジタルフルーエンシー)や技術変革に関する研修プログラムについても、導入予定率が30パーセントという結果が出ています。従業員としては、デジタルスキルを磨くことで、労働市場におけるビジネスパーソンとしての価値を高めることができます。特にインドや中国などの新興国では、デジタルスキル取得に意欲的な労働者が多いことがわかっています。
2020年の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)では、2030年までに全世界で10億人のリスキルを目指す「リスキリング革命」が提唱され、DX化のためのスキル習得と人材育成への関心が急速に高まりました。既存社員のリスキリングや人材育成に力を入れる企業は、日本でも増えています。たとえば日立製作所は、2019年4月にグループ企業のためのデジタル人材を育成する新会社「日立アカデミー」を設立しており、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は、2021年3月からグループの全社員5万人を対象としたDX教育を開始しています。
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