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コロナ禍で勢いを増したメドテック産業の最新動向

2023年8月3日 | 発行元 Statista Japan
Lordn via Getty Images
  • 2023年6月、メドテック大手・メドトロニック(Medtronic)の日本法人の一つであるコヴィディエンジャパン株式会社は、手術支援ロボットシステム「Hugo」の消化管外科手術への適応拡大に関する承認を同年5月に日本の厚生労働省から取得したと発表しました。 
  • 体外診断用医薬品(IVD)の開発を手掛けるシスメックス株式会社は、2023年6月、脳内アミロイドβ(アルツハイマー型認知症にみられるアミロイド斑の主成分を構成するたんぱく質)の蓄積状態を把握してアルツハイマー病を検知する検査試薬「HISCL β-アミロイド 1-42 試薬」および「HISCL β-アミロイド 1-40 試薬」を日本で発売すると公表しました。 
  • 2023年6月、中国東部浙江省杭州市にキャンパスを置く浙江大学の医療チームは、4,500キロ以上離れた新疆ウイグル自治区の邵逸夫アラル(阿拉爾)病院の遠隔手術センターで、中国製の手術用ロボットを遠隔操作した肝臓血管腫切除の手術を実施したと発表しました。 

メディカルテクノロジー(メドテック)産業は、ヘルスケア分野の中核産業です。同産業では、疾病の予防、診断、治療に必要とされる医療機器が開発・製造されており、広く知られているメドテック製品としては、ペースメーカーやMRIなどの画像診断機器、透析装置、インプラントが挙げられます。世界のメドテック産業の市場規模は2021年に約5,500億ユーロに達しており、以前から同産業の中心地は米国と西欧ですが、業界の動向をみるとアジア地域、特に中国が今後数年でより重要な役割を果たすことになるとみられています。 

メドテック産業を牽引する米国

世界の主要なメドテック企業の大半が本社を置いているのは、メドテック産業を牽引する米国です。メドトロニック(Medtronic Inc)は、2022年度に約317億米ドルの売上を記録して業界ナンバーワンの座を獲得しました。Medtronicは、循環器系疾患や糖尿病などさまざまな疾患領域に取り組んでおり、その収益の大半を米国市場で生み出しています。世界の主要なメドテック企業には、ほかにもアボット・ラボラトリーズ(Abbot Laboratories)やジョンソン アンド ジョンソン(Johnson & Johnson)があります。 

2023年6月、メドトロニック(Medtronic)の日本法人の一つであるコヴィディエンジャパン株式会社は、手術支援ロボットシステム「Hugo」の消化管外科手術への適応拡大に関する承認を、同年5月に日本の厚生労働省から取得したと発表しました。同システムは泌尿器科や婦人科では導入済みでしたが、今回の適応拡大によって、より多くの患者が低侵襲手術(難度は高いが体への負担が少ない患者に優しい手術)を受けられるようになることが期待されています。 

メディカルテクノロジー産業の主要部門

メドテック産業において最も業績が好調な部門は、体外診断用医薬品(In Vitro Diagnostics、IVD)や心臓病治療、画像診断、整形外科となっており、IVD部門だけで同産業全体の売上の18パーセントを占めています。診断は、医療において最も重要な要素の一つですが、体外診断用医薬品を活用すれば、さまざまな症状や疾患、感染症を特定することができます。IVD産業で取り扱われる製品は、家庭で使用できる小型で簡素な検査から複雑な検査機器まで、種類は多岐にわたります。 

IVDの開発を手掛けるシスメックス株式会社は、2023年6月、脳内アミロイドβ(アルツハイマー型認知症にみられるアミロイド斑の主成分を構成するたんぱく質)の蓄積状態を把握してアルツハイマー病を検知する検査試薬「HISCL β-アミロイド 1-42 試薬」および「HISCL β-アミロイド 1-40 試薬」を日本で発売すると公表しました。アルツハイマー病は、アミロイドβが脳内に溜まって神経細胞に障害を与えることが原因で発生するとされることから、蓄積状態の把握は重要であり、低侵襲で、迅速かつ簡単な検査へのニーズが高まっています。 

新型コロナがメドテックに与えた影響

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、メドテック産業にも大きな影響を与えました。IVD部門では、主に新型コロナウイルス用の迅速抗原検査キットやPCR検査の需要拡大を受けて、2020年から2021年の間に収益が大幅に増加しました。また、コロナ禍によってデジタルヘルスへの関心と需要も大きく高まりました。コロナ禍が始まる数年前からデジタルヘルスへの投資は増加傾向にありましたが、2021年には、2010年から2017年までの投資総額を上回る約450億米ドルの資金が流れ込みました。コロナ禍以降に利用率が上がったデジタルヘルスツールとしては、遠隔診療や患者用ポータル、モバイルアプリなどが挙げられます。 

2023年6月、中国東部浙江省杭州市にある浙江大学の医療チームは、4,500キロ以上離れた新疆ウイグル自治区の邵逸夫アラル病院の遠隔手術センターで、中国製の手術用ロボットを使った肝臓血管腫切除の遠隔手術(オンライン手術)を実施したと発表しました。5Gネットワークを活用した超遠隔手術には、内視鏡を装備した4本のロボットアームをもつ手術ロボットが使われたとみられ、医療従事者が少ない農村など末端地域での実用化が期待されています。 


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