デジタル・テクノロジー

米国のEdTech市場とオンライン大学のメリット

2024年3月22日 | 発行元 Statista Japan
勉強机でパソコンの前に座り、オンライン授業を受ける黒人男性
gorodenkoff via Getty Images
  • 世界のeラーニング市場規模は、2026年には約4千億米ドルに達すると予測されており、米国はオンライン学習プラットフォームの売上高が最も高い国のひとつです。
  • ドイツのオンライン大学「トゥモロー応用科学大学(Tomorrow University of Applied Sciences)」は2024年2月、アップル(Apple)のMRヘッドセット「Vision Pro」を使用して受講できるMBAを導入すると発表しました。

テクノロジーが発達したおかげで、オンライン授業やデジタル教科書はもちろん、学習用ウェブサイトからAI(人口知能)まで、米国の学生は、さまざまなデジタル学習支援ツールを勉強に活用できます。EdTech(エドテック)とは、Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、テクノロジーで教育を支援するサービスを指します。米国の教育機関では、学習行動の把握や授業の管理、成績通知や教師・学生・家族間のコミュニケーション促進にEdTechが活用されています。新型コロナウイルスの感染拡大で全米の小・中・高校や大学が閉鎖され、多くの学生がオンライン授業に頼らざるを得なくなったこともあり、EdTechは過去数年で爆発的に広まりました。パンデミックは収束したものの、米国の教育シーンにおける普及率は、今後も伸び続けると考えられています。2023年時点では、米国の大学で行われる授業の少なくとも一部は、依然としてオンラインです。

また、チャットGPT(ChatGPT)のようなAIツールが最近注目されるようになったことで、米国ではデジタル教育の需要がさらに高まっています。2023年時点では、米国の州教育局の半数以上が、前年と比べて「教育現場におけるAIの使用に関するガイドラインを求める声が高まっている」と回答しています。なお、世界のeラーニング市場規模は、2026年には約4千億米ドルに達すると予測されており、米国はオンライン学習プラットフォームの売上高が最も高い国のひとつです。

米国の小・中・高校(K-12)におけるEdTech

K-12(米国の小・中・高等学校)では、1学区当たりで使われているEdTechツールの数が2,500個以上となっており、2018・2019年度の895個から飛躍的に増加しています。2022・2023年度に米国で実施された調査によると、K-12の生徒や教員が最もよく利用するEdTechツールは、オンラインアクティビティ、ゲーム・クイズ、リサーチの機能が搭載された「学習支援プラットフォーム」でした。ツール別の内訳をみると、最も使用されている学習支援プラットフォームは「ニアポッド(Nearpod)」で、学習管理システム部門では「グーグル・クラスルーム(Google Classroom)」、オンライン学習ツール部門では「クイズレット(Quizlet)」が人気トップです。

2023年には、K-12の教員の半数以上が、EdTechは「セルフペースラーニング」や「学習の拡張・強化」、「アクセシビリティ(視覚的、身体的、その他)機能付きの学習ツール」の分野で最も効果的であると回答しており、多様な生徒層の学習促進につながることが期待されています。また、K-12の教員の68パーセントは、個別の教育指導が必要な生徒の支援につながるEdTechツールを望んでおり、30パーセント以上は、生徒のメンタルヘルス向上や身体に障がいを抱える生徒の支援に役立つEdTechがより多く導入されるべきと答えています。

しかし、2021・2022年度に行われた調査からは、K-12の教員の多くがデジタル教材の導入に悪戦苦闘している様子が見えてきます。典型的なのは、デジタル端末では学べないスキルを教える場合や、学校から教師への指導が不十分な場合です。また、小・中・高校でのデジタル技術の導入は、サイバーセキュリティの問題や子どもの個人情報が漏えいする危険もはらみます。2023年時点では、K-12の教員の大半が「AIに関する専門的な訓練を受けていない」と答えており、半数以上が「AIがもたらす影響を危惧している」と回答しています。

オンライン大学のメリット・デメリット

2023年の調査では、米国の大学生の半数以上が「フルオンライン制の学位プログラムによってより多くの学生が高等教育を受けられるようになった」と答えており、EdTechが多様な学生層の学びを促進するという説を裏付けています。他方では、「オンライン授業の質は対面授業に比べて劣る」と答えた学生も一定数存在しました。30パーセント以上の学生が「オンライン学位プログラムによって地理的利便性やカリキュラムの柔軟性が向上した」と答えたものの、「授業の質や学生間のコミュニケーション・コラボレーションスキルが低下した」と答えた学生も同じ割合で存在しました。2022年の調査では「オンライン授業の質は対面授業と比べて低い」と答えた大学生の数が43パーセントにのぼりました。

2023年に米国で行われた別の調査では、グループプロジェクト、プレゼンテーション、ディスカッションなどのコースワークをオンラインで履修したいと答えた大学生は少数派だったことがわかっています。さらに「フルオンライン制の大学に通うために学生ローンを借りるべき」という意見に強く賛同した大学生は、2021年の12パーセントから2023年には7パーセントに減少しました。しかし、オンライン大学を選択する理由として最も多かったのが「学びやすい学費設定」であったことを踏まえると、学費が安いためにそもそも学生ローンを借りる必要がないということも考えられます。オンライン学位プログラムを選んだ主な理由について、学生の42パーセントは、仕事と家庭が原因で通学制大学に通えないこと挙げています。オンライン学位プログラムは、家事や仕事などで忙しい学生にとって、より柔軟性が高く、安価な選択肢となっているのかもしれません。

最近では、より多くの学生を惹きつけるべく最新技術を活用した取り組みを行うオンライン大学も現れています。ドイツのオンライン大学「トゥモロー応用科学大学(Tomorrow University of Applied Sciences)」は2024年2月、アップル(Apple)のMR(複合現実)ヘッドセット「Vision Pro」で受講できるMBA(経営学修士)を導入すると発表しました。受講期間が18か月の「IMPACT MBA X Vision」プログラムでは、Vision Pro向けのネイティブアプリでサステナビリティ、リーダーシップ、ビジネスイノベーションを学ぶことができます。授業料は総額で2万1千米ドルですが、1台3,499米ドルのVision Proが無料で支給されるとのことです。


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