経済

コロナウイルスやウクライナ侵攻によって高騰する世界のインフレ率

2023年02月14日 | 発行元 Statista Japan
2023年は、2022年よりもさらにエネルギー危機が悪化。物価の上昇とエネルギー危機の概念。世界的な危機による電力価格の高騰。
Galeanu Mihai via Getty Images
  • 米労働省が発表した2022年11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比7.1%上昇したものの、伸び率は5カ月連続で鈍化しました。エネルギー価格を中心に高インフレには落ち着く兆しが出ていますが、賃金の伸びは高いままでインフレ圧力はなお根強く、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げの到達点を慎重に見極めています。
  • 2022年12月にアジア開発銀行(ADB)は、2023年のアジア新興国のインフレ率は4.2%に成るとの見通しを発表しました。石油やガス、食品の価格がウクライナ侵攻前と比べて高い水準にとどまっていることや、物価高の継続、各国中央銀行の金融政策引き締めを懸念材料として挙げています。
  • 日本は長年デフレに苦しんできましたが、世界的な物価の高騰を受け、2022年10月には前年比上昇率が3.6%(生鮮食品を除く総合指数)となりました。日本銀行は賃金上昇を伴う形で2%のインフレ率が安定的に推移することを目指していると述べています。

インフレーション(インフレ)は、あらゆるモノやサービスの価格が上昇する現象を指します。世界各国の中央銀行の多くは、年率1.5~4%の低く、安定的なインフレ率を目標に掲げています。しかし2021年末以降、物価の変化率は世界各国で上昇しており、国際通貨基金(IMF)の試算によると、2022年の世界の物価上昇率は8.8%に達する見込みです。

インフレ率が高い場合、賃金より物価の方が先に上昇する傾向があるため、貯蓄や固定給などで生活している人の購買力は相対的に低下します。インフレの極端な例である「ハイパーインフレ」では、通貨の価値が急速に失われることで実質的に無価値となるため、経済全体が崩壊する可能性もあります。インフレの逆であるデフレーション(デフレ)においても、物価の下落によって企業や金融機関が節約を余儀なくされることで、賃金の低下、雇用の減速、失業率の上昇、投資の遅滞などにつながることが問題視されています。

Statistaによるこのインフォグラフィックは、2007年以降の米国のフェデラルファンド(Federal Fund)ターゲットレートの推移を示したものです。
Source: statista.com

インフレ率の測定方法

インフレ率は、一般的に消費者物価指数(CPI)で測定されます。CPIは特定のモノやサービスの価格をまとめた物価の変動を測定するものです。CPIは消費者が実際に負担するコストを反映しており、物価の変動が消費者に与える影響を示しています。一方、物価がビジネスに与える影響は、企業のコストを示す生産者物価指数(PPI)などで測定されており、アナリストたちは業界ごとのCPIにも注目しています。消費者の間でも関心は幅広く、特に高齢者は年金で生活する場合が多いため、若い人たちよりも物価に注意を払い、物価高を懸念する傾向があります

主要国のインフレ率を見ると、2022年10月時点でユーロ圏は前年同月比10.6%、ブラジルは6.47%、中国は2.1%、日本は3.7%でした。ロシアはウクライナ侵攻に伴う制裁や外資系企業の撤退などにより、2022年4月に17.8%の物価上昇率を記録しましたが、同年10月には12.6%まで落ち着いています。インフレ率の上昇は世界的なトレンドであり、長年デフレに苦しんできた日本にも値上げの波は到達したものの、日本のインフレ率は欧米諸国に比べると低い水準で推移しています。これにはエネルギー価格こそ急騰したものの、食品やコア・インフレ率が低かったことや、日本銀行が金利を-0.1%に据え置いていることが理由として挙げられます。

米労働省が発表した2022年11月のCPIは前年同月比で7.1%で、インフレが続いてはいるものの上昇率は鈍化しました。インフレ圧力は依然強いままで、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利をどこまで上げるかに注目が集まっています。

アジアにおいては、アジア開発銀行(ADB)が2023年のアジア新興国のインフレ率は4.2%に達するとの見通しを示しています。石油やガス、食品の値段は以前より下落したもののウクライナ侵攻前よりは高水準にとどまる上、物価高、各国中央銀行による金融政策の引き締めが、更なる悪影響をもたらすことを懸念点として挙げています。

Statistaによるこのインフォグラフィックは、2022年の国別年間インフレ率の予測値を示しています。
Source: statista.com

コロナウイルスとウクライナ侵攻によるインフレ

2021年後半にかけてコロナウイルスの状況が改善するにつれ、需要は回復しましたが、一度停止したモノの生産や物流を通常の水準に戻すのには時間がかかりました。これが同時期の世界的インフレの主な要因となっています。また、中国がいわゆる「ゼロコロナ政策」の一環として上海などで完全な都市封鎖(ロックダウン)を続けたため、主な拠点における生産に混乱が生じ続けています。

さらに、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は、世界のインフレにさらに拍車をかけており、特に小麦やトウモロコシなどの一部の食料品や天然ガスなどのエネルギー源に大きな影響を与えています。IMFによると2016年の価格を100とした場合、2022年10月には食料品は133.2、原油は227.6、天然ガスは372.2、石炭は483.8と急騰しており、インフレ率の上昇とエネルギー価格の高騰は、庶民の財布を圧迫しています。また、今後も更なる値上げが予想されているため、少なくとも今後数ヶ月間はインフレが続くと想定されています。


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