貧困とは、人間としての基本的ニーズおよび/または十分な生活水準を保つのに必要な一定の資金あるいは物質的財産をもたない人または集団の状態を指します。世界の貧困は、過去10年で劇的に改善しました。特に東アジア地域がこれに大きく貢献しており、同地域では、中国の目覚ましい経済発展によって数百万人が貧困からの脱出に成功しています。貧困に苦しむ人の数が減少している一方で、世界には1日2.15米ドル未満で暮らす人びとが現在も推定6億5千万人いるとみられています。主にサブサハラ・アフリカ地域の一部の国々では、家族を養うのに十分な収入を得られない人が数百万人いるとされ、近年では、ギリギリの生活を強いられていた人びとの多くが、世界的なインフレ率上昇により貧困状態に陥ったと考えられています。したがって、各国政府はこの先数年にわたり、より多くの人を貧困から救うだけでなく、さらに多くの人が貧困状態に陥るのを防がなければならないという大きな課題に直面しています。
欧州統計局(Eurostat)が2023年6月に公開したデータによると、2022年時点では、EU(欧州連合)の全人口の22パーセントにあたる9,530万人が貧困または社会的排除のリスクにさられていたことがわかりました。EUで最も高い数値が測定された国は、34パーセントを記録したルーマニアでした。
貧困の定義
貧困の定義は年月とともに変化します。国際貧困ラインは最近まで、購買力平価(PPP)に基づいて1日1.90米ドルに設定されていましたが、世界的なインフレ率の上昇を背景に、2022年9月からは1日あたり2.15米ドルに変更されています。なお、各国が独自に定める貧困水準はそれぞれ異なります。たとえば、米国で暮らす人は、ナイジェリアで暮らす人に比べてはるかに高い収入を得なければ、一定の生活水準を保つことができません。2022年時点では、中所得国における貧困ラインは1日3.65米ドルに設定されており、高所得国では1日6.85米ドルとなっています。
とはいえ、貧困率の測定には限界があります。貧困率では、「貧困の深刻さ」は計測できないからです。たとえば、ソマリアの人口の71パーセントが、貧困ラインである1日2.15米ドル未満で暮らしていると仮定します。こうした人びとがより深刻な貧困状態に陥ったとしても、すでに貧困ライン以下の生活をしているため、同国の貧困率に変化は生じません。貧困の深度を測るのに用いられるのが「貧困ギャップ率」です。貧困ギャップ率は、貧困ライン未満の人々の平均所得が、貧困ラインをどのくらい下回っているか(=貧困の深刻さ)を示す数値です。
国連(UN)は、極度の貧困(1日2.15ドル未満での生活)を2030年までに撲滅することを目標に掲げていますが、世界銀行(World Bank)によると達成は極めて困難であるとみられています。2022年に発表された世界銀行のデータでは、2030年には世界中で極度の貧困状態にある人の数が約5億7,400万人に達すると予想されています。この数字は日本とEUの総人口とほぼ同等であり、予想が現実になれば、極度の貧困撲滅からは程遠い状況であると言えるでしょう。
貧困の多面性
貧困は、「絶対的貧困」と「相対的貧困」に分類されます。絶対的貧困とは、水や食料、衛生設備、住まいといった生活の最低必要条件が満たされていない状態を指し、世界各国・地域で同じように測定できます。一方相対的貧困とは、ある国・地域の平均的な生活水準を保つことができず、社会生活にも参加できない状態を指します。そのため、相対的貧困の水準は国・地域によって異なります。また、貧困にはさまざまな側面があり、それらは相関関係にあります。たとえば、衛生状態が悪く安全な水や調理用燃料を確保できないといった劣悪な生活環境は、栄養不良の原因となるだけでなく、最悪の場合は死に至るケースもあります。貧困にはほかにも、電気が使えない、教育が受けられない、社会生活に参加できない、特定の資産にアクセスできないといった要素が存在します。ある調査によると、世界の貧困を効率的に削減するには、貧困のすべての側面を同時進行で改善していく必要があることがわかっています。
貧困の多面性を測る非金銭的指標としては、社会的必需項目(Socially perceived necessities、SPNs)が挙げられます。最低限の生活水準を維持するのに必要とされる社会的必需項目には、冷蔵庫のような生活必需品以外にも、社会的なつながり(困った時に助けてくれる人がいる状況)や、電気・ガス・水道といった公的サービスや社会保障などが含まれます。国連児童基金(UNICEF)が2023年8月に公表したレポートによると、社会的必需項目22項目をすべて満たした南アフリカの世帯は、全体の約8パーセントであることがわかっています。レポートの内訳をみると、22項目すべてを満たした人の約9割は都市部在住で、10項目未満だった人の8割は地方在住であることから、貧困の地域格差が浮き彫りになっています。
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