社会・経済

【メンタルヘルス】世界の精神医療を取り巻く現状

2023年9月21日 | 発行元 Statista Japan
メンタルヘルスの不調を抱える男性。
Bulat Silvia via Getty Images
  • Statistaの市場調査サービス「Market Insights」によると、2023年のメンタルヘルス世界市場の売上高は367.3億米ドルに達し、2028年までに376.7億米ドルに増加すると予測されています。メンタルヘルス市場の年平均成長率(CAGR)は、0.51パーセントとなる見込みです。 
  • 米・国立保健統計センター(NCHS)によると、米国では毎週1,500人以上の人々がオピオイド(麻薬性鎮痛薬)の過剰摂取により命を落としているとされます。 
  • 最新の調査で、米国ではパンデミック期間中にオンラインカウンセリングなどのメンタルヘルスサービスの利用率が飛躍的に上昇したことがわかっています。 

重い病気や人命の損失をもたらすメンタルヘルス(こころの健康)の不調および薬物依存は、世界各国で喫緊の課題となっています。精神障害の診断カテゴリーは、最新の知見を倫理的な治療ガイドラインに取り入れる目的で、絶えず改訂されています。こうした診断カテゴリーには、気分障害や精神病、パーソナリティー障害、依存症、神経発達障害といった幅広い種類の疾患・障害が含まれます。 

世界各国で実施されているメンタルヘルスプログラムでは、精神障害の認知向上、患者への偏見に対する反スティグマキャンペーン、そして人権保護に重点が置かれています。メンタルヘルスや心理社会的支援事業は、ケアの継続性(さまざまな医療従事者が関わっていても中断することなくケアを提供できる状態)や人権問題、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的拡大)がもたらす心理的影響といった直近の懸案事項に対応する形で、この先数年にわたり拡大し続けるとみられています。 

Statistaの市場調査サービス「Market Insights」によると、2023年のメンタルヘルス世界市場の売上高は367.3億米ドルに達し、2028年までに376.7億米ドルに増加すると予測されています。メンタルヘルス市場の年平均成長率(CAGR)は、0.51パーセントとなる見込みです。 

メンタルヘルスと死

自殺行動は、こころの健康や心理社会的健康に関連する公共衛生の重要課題で、すべての年齢層において見受けられます。大半の国では、女性より男性の自殺率が高くなっていますが、自殺未遂歴の有無では女性が男性を上回っており、非自殺的な自傷行為も女性に多いのが特徴です。 

精神疾患を患っている人は、自殺以外にも、摂食障害や薬物乱用が原因で命を落とすケースがあります。薬物乱用がもたらす影響は、オピオイド(麻薬性鎮痛薬)の過剰摂取による死者数の多さを見れば明らかです。オピオイドへの薬物依存は、米国とカナダを中心にエピデミックと呼ばれる水準にまで深刻化しています。米・国立保健統計センター(NCHS)によると、同国では毎週1,500人以上の人々がオピオイドの過剰摂取により命を失っているとされます。米国では2000年以降、100万人以上が薬物の過剰摂取で死亡しており、その大半がオピオイドによるものです。近年、この社会問題を悪化させているのは主にフェンタニルなどの合成化合物であるとみられ、メキシコから密輸されるオピオイドの量は年々増加しているとされます。 

なお、日本における自殺の状況について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。 

メンタルヘルスケアと格差

高所得国と低所得国の間では、依然としてメンタルヘルスケアを取り巻く環境に格差が存在します。格差が生じている分野には、メンタルヘルス・ガバナンス(管理体制)や、適切な予防・治療介入プログラム、信頼性のある報告・情報システムが含まれます。精神医療に従事する医師や看護師といった人材も重要な要素のひとつです。欧州は、精神医療従事者の数が世界で最も多い地域です。人口10万人当たりの医療従事者数は45人となっています。世界平均の従業者数は10万人当たり13人です。一方で、低所得国における精神医療従事者の数(中央値)は、人口10万人当たり1.4人となっています。さらに発展途上国の多くは、財源不足という負担も抱えており、低所得国のメンタルヘルスに対する国民1人当たりの政府支出額からもこのことがはっきりとわかります。 

新型コロナとメンタルヘルスへの影響

新型コロナの世界的大流行は、世界中の人びとのメンタルヘルスに深刻な影響を及ぼし、その心理的後遺症は今後長期にわたって継続することが予想されています。感染への恐怖やロックダウン(都市封鎖)、職場・教育・対人関係におけるさまざまな制限の結果、多くの人々はこころの不調を訴えています。パンデミック初期に7か国の労働者を対象に行われた調査によると、回答者の半数以上が「精神的疲労が以前よりひどくなった」「日常生活で悲しむことが増えた」「怒りやすくなった」と答えています。また、3分の2以上が職場でのストレスが増したと答えています。 

新型コロナとの闘いの最前線に立った医療従事者たちは、社会基盤を支えるエッセンシャルワーカーとして、感染の危険と隣り合わせのなかで医療サービスを提供し続けました。コロナ禍でメンタルヘルスや神経医療、薬物依存症に関連するサービスの維持が困難になった際、多くの医療事業者は対面での診療を中止し、オンライン診療などに切り替えました。たとえば、世界の約30パーセントの国々では、薬物の使用を無理にやめさせずに依存症の害を減らそうとする「ハームリダクション」の支援活動が、2020年の夏に一時中断されていたことがわかっています。 

最新の調査で、米国ではパンデミック期間中にオンラインカウンセリングなどのメンタルヘルスサービスの利用率が著しく上昇したことが明らかになっています。米国では2020年3月から2022年8月の間に、メンタルヘルス関連サービスを利用した人の数が約39パーセント増加し、関連支出も約54パーセント増えたことが判明しています。 


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